海への憧れと海の約束 ページ20
モストロラウンジのお仕事が終わってからしんと静まり返った店内。
その店内には大きな水槽があり私はそこに手を付きずっと眺めていた。
昔から憧れだった。
花の化身となってしまった自分は海に入ることはおろか、水溜まりにもその身体を入れることが出来ない。
花を水の上に置いて浮かぶ様に私の体も水に浮かんでしまうのだ。
だから本の中でしか見たことが無い海の世界にとてつもない憧れがあった。
「なーに見てんの〜?」
「水槽の中のものです。これって海を模して作られてるんですよね?」
「うん、そだよ〜?なに、興味あんの?」
「はい、私海の中にとてつもない憧れがあるんです。私は海に入れないので……」
「なんで?入ればいいじゃん」
「実はかくかくしかじかで」
「…へぇ〜、ルリハタちゃん、やっぱ軽いのって理由あったんだぁ〜?それに、そんな軽いなら海の中に入ったら珊瑚の卵みたいに潮に流されて食べられちゃうよぉ〜……」
「え、私食べられるんですか?!」
「うん、絶対食べられちゃうよ〜?どう?海って怖いって思ったぁ〜?」
「いいえ!!余計に興味が湧きます…!!溺れるってどんな感じなんでしょう?潮に流されるってどんな感覚なんでしょう…?!余計に憧れちゃいます…!!」
それを聞いたフロイドさんが目を大きく見開き呆然とするのではしゃぎすぎたなと反省する。
謝ろうとする前にフロイドさんが声を大にして笑った。
なぜこんなにも笑われているのだろう。
そんなにおかしなことを言ったであろうか?
「そんなに海の中に入りたいなら魔法でもなんでも使って入りゃいいじゃん!!」
「そんなに簡単に入れるなら苦労はしません。」
「…海なら俺が連れてってあげる。だから他の奴らに頼らないで?いい?」
「??はい。分かりました。」
約束ね?と指を絡ませられるので指切りげんまんの歌を唄うと不思議そうな顔された。
「なにそれ?」
「あれ、知らないですか?指切りげんまんって歌なんですけど」
「つ〜か、約束破るとハリセンボン飲ませるの〜?無理じゃね〜?」
「??そうですね、針千本飲ませますね。無理だからこそちゃんと約束守ってね、って意味合いが込められてるんです。」
「陸のおまじないってやつ〜?怖すぎじゃん。」
「だからちゃんと守るのでいつか連れてって下さいね?」
「任せて〜。海の事なら何でも知ってるから何でも聞いてよ。」
「はい、ありがとうございます。」
ぎゅ〜とフロイドさんに抱きしめられたので、その大きな背中をゆっくり擦ってあげた。
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作者名：モネ | 作成日時：2021年10月5日 13時
