8【兵助side】 ページ9
俺が三郎達の部屋に入ると中には既に三郎、雷蔵、勘右衛門の3人が寝巻き姿で待っていた。
「兵助、おかえり〜。」
「何か分かったか?」
雷蔵と三郎がすぐに声を掛けてくる。
「…分かったかと言われると微妙だな。」
「は?どゆこと?」
勘右衛門もすかさず会話に入ってくる。
「好きな人がいるか聞いてみたけど、まず恋愛感情が分からないってさ。」
「そこからか〜。」
「ほ、ホントにそう言ってたの?」
勘右衛門が片手で顔を覆い天を仰ぐのに対して、雷蔵はずいと顔を近付けてそう聞いてきた。
「そう言っていたよ。嘘をついているようには見えなかったけど。そういえば、八左ヱ門はどうしたんだ?」
「今風呂に行ってる。また委員会で飼ってる生き物が逃げ出したみたいでな、泥だらけだった。」
俺の質問にすぐに答えてくれたのは三郎だった。八左ヱ門があちこちに砂や泥をつけてヘトヘトになって長屋に戻って来た姿が容易に想像できた。
「恋愛感情が分からないと本人が言っていたとなると…雷蔵、やっぱりお前の勘違いなんじゃないのか?」
「た、確かに確証はないけど…!でも、Aが時々八左ヱ門を見つめるあの眼差しはどうみても友達に向けるものじゃないと思ったんだけど…。あぁ〜でもそう言われると普通なような気もしてきた…うぅ〜ん。」
「まさかのここで迷いぐせが出るのかよ!」
三郎の言葉に頭を抱えて悩み出した雷蔵にすかさず勘右衛門がツッコミを入れる。
「とにかくさ、二人それぞれの気持ちもあるだろうし、ちょっとしばらくは様子見でいいんじゃないか?良かれと思って二人の仲を取り持つつもりだったけど、逆効果になってしまっては大変だしな。」
俺がそう言うとみんな静かに賛同してくれた。
雷蔵はまだ悩んでるみたいだったけど。
とりあえずそこでお開きになって俺と勘右衛門は自分達の部屋に戻った。
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作者名:結 | 作成日時:2023年6月27日 15時