そして、全てに (ページ8)

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『私に聞きたいこと？』
B定食のメインのから揚げを口に含みながら聞き返す。
おばちゃんのご飯は本当になんでもうまい。

「Aはさ、好きな人とか、いる？」
『んんっ！？っぐ、げほっ！げほっ！』
から揚げが喉に詰まるところだった。

「だ、大丈夫か？」
兵助が心配そうにお茶が入った湯呑みを差し出してくれる。

『う、うん。いやぁ、兵助からそんな話を聞くことになるとは思わなかったなぁ…で、どんな子なんだ？』

「…は？」

『好きな子がいるんじゃないのか？』
「なんでそーなる！俺の話じゃなくて！お前のが聞きたいんだってばっ！」

兵助が少し顔を赤らめながら、慌てたように叫ぶ。
(豆腐の話以外でこんなに興奮してる兵助は珍しいな。)

『…好きな人か、いつかそんな人ができたらいいなとは思うな。』

「つまり、今はいないってことか…？」

『そういうことになるんだろうな。尤も恋愛感情というものがどんなものなのか私には皆目見当がつかないが。』

「そうか…。」
そう言うと兵助は考え込むように黙ってしまった。
なんか今日の兵助は様子がおかしいような気がする。

『あまりそういう話は得意じゃないが、聞くだけなら私でもできるぞ？』
「だ、だから俺のことじゃないって！ほら！さっさと食べて長屋に戻るぞ！！」
やっぱり様子がおかしい兵助に急かされて、夕飯を食べ終えた私たちは五年長屋へと戻った。

「じゃあ、俺はちょっと三郎達に用があるから。またな。」
そう言って兵助はろ組の三郎と雷蔵の部屋へと入っていった。

私は伸びをしながら自室へと向かう。
(今日は結構勉強したし、風呂に入ったら早めに休もう。
あ、でも、あとで勘右衛門に話をしなくては…。)

騒ぎの原因になった同級生の顔を思い出すと戸を開ける手に自然と力が籠ってしまう。彼のおかげでなんだか今日は少し疲れてしまった。

兵助の様子がなんだか少し変だったことが気がかりではあったが今日は早々に休むことにした。

隣の隣の部屋では男たちが謎の作戦会議をしていることも知らずに…。