5【八左ヱ門side】 ページ6
「もう、決めた。あいつだって女扱いされるのなんて望んでないのに、こんなん伝えても困らせるだけだ。」
「そ、それは覚悟の上で伝えようってなったんじゃないか!」
珍しく雷蔵が声を荒げる。
「そうだぞ。それに困るかどうかは伝えてみないとわからないじゃないか。」
「私たちは忍者のたまご。いつかは忍びの道に進む。そうなった時に伝えなかった事を後悔するかもしれないぞ。」
勘右衛門と三郎も諭すように話しかけてくる。
「そうかもしれないな。でも…」
「好きなんだろ!?Aのことがっ!」
今日の雷蔵はなんだか感情的だ。
(いや、俺の気持ちを親身になって考えてくれてるんだろうな。ホントにみんないい奴らだな。)
「元々は俺がお前らに相談なんかしたのが原因だ。やっぱりこのまま仲間のみんなでワイワイやってる方が楽しいしさ!」
俺は精一杯の笑顔を浮かべた。
ちゃんといつも通りに笑えているだろうか。
ホントはAと男女の関係になれたらすっげぇ嬉しい。
俺の事好きになってくれたらいいなって、そうなればいいのにって思う。
けど、今のこの平穏を崩すのが怖いのも事実だ。
もう五年も拗らせてるこの気持ちに終止符を打ちたいと五年生のみんなに相談したが、やっぱりこの気持ちはこのまま墓場まで持って行った方がいいのかもしれない。
「…八はなんにも分かってないよ…ホントに…。」
雷蔵が俯きながら呟く。
「ありがとうな、雷蔵。俺のためにそんなに考えてくれて。」
「…八のためだけじゃないけどね。」
「ら、雷蔵!」
「ん?なんか言ったか?」
「な、なんでもないよ!それより兵助とも合流しよう!今の状況を説明しないとな!」
よく聞こえなくて聞き返すと三郎がなんだか慌てた様子で雷蔵を宥め、勘右衛門が早口でこれからどうするかを提案する。
そんなわけで俺たちは兵助を探して合流することにした。
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作者名:結 | 作成日時:2023年6月27日 15時