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大きめの独り言を呟きながら兵助の足音は遠ざかって行った。
「『はぁ〜〜〜っ…』」と二人同時に息を吐く。
「行ったみたいだな…!?っわ、わりぃ。」
急にこちらに顔を向けてきた八左ヱ門が顔を背けつつ少し距離をとる。
どうやら思ってたより近づき過ぎていて驚いたようだ。
『なんで謝るの?それよりこれからどうするか。このままここにいるのもあまり得策じゃない気もするな…一度長屋に戻るか…八はどうする?』
「お、俺!?あ、あ〜そうだなぁ…とりあえず他の隠れ場所でも探すかなぁ。」
『そっか。じゃ、お互い頑張ろうな!』
「あ、あぁ…。」
なんだか歯切れが悪い話し方をしている八左ヱ門を残し、私は高く跳躍し穴から出て、一先ず長屋へ身を隠すことにした。
あの狼狽えぶり、八左ヱ門もよほど豆腐地獄が恐ろしいと見える。
(兵助の豆腐美味いんだけどなぁ…量がな…
常識を遥かに凌駕してるんだよなぁ…)
そんな事を考えながら私は長屋へ急いだ。
私の長屋はもちろん忍たま長屋だ。他の五年生達と同じ。
なぜ私はくのたま長屋ではなく忍たま長屋で過ごしているのか。
私は忍術学園に入学するにあたって決めた事がいくつかある。そのうちの一つが忍たま達と同じ事を学び共に生活すること。
そのために自分が忍たま達に異性として好意を寄せるのも禁じた。つまり恋愛感情を抱かないようにすること。
私を対等の同級生として扱って欲しくて言葉遣いもなるべく女らしくないものを選ぶようになった。
最初の頃は私のことをよく思ってない同級生に因縁をつけられたりする事もあったけど、兵助、勘右衛門、三郎、雷蔵、八左ヱ門のおかげでなんとか今日までやってこれた。
五人には本当に感謝している。
そんな事を考えているうちに長屋の自分の部屋まで辿り着いた。私の部屋は八左ヱ門の隣で一人部屋だ。そこは学園長や先生方が気を遣って下さった。
中の気配を探りつつそっと戸を開ける。
どうやら兵助は隠れていないようだ。まぁ、元よりそんな事をする奴ではないと思うけど、念のため。
素早く中に入り、腕を伸ばして伸びをする。
『ん〜〜っ。さてと、万一に備えて押入れの中で宿題でもやるかな。』
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作者名:結 | 作成日時:2023年6月27日 15時