そして、全てに (ページ3)

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「八左ヱ門！ちょうどいい、お前もAから話を聞け。私と雷蔵はもう行くから。じゃあな。」
「A、ごめんね。」
言うが早いか二人はあっという間に姿を消してしまった。

『あ！折角教えてやったのに、薄情ものー！！』
「？何が薄情なんだ？」
いつの間にか私の隣に来た竹谷八左ヱ門が首を傾げる。
『ここにずっと留まるのはまずい。走りながら話す！こっちだ！』
そう言うと勘のいい八左ヱ門は私と一緒に走り出した。

とりあえず校庭の隅の方に向かって走りながら話す。
やはり八左ヱ門も全てを話さずとも理解してくれた。
「マジかよ！？でも、確かに前回から少し期間が空いてるか…お前はどこに身を隠すつもりなんだ？」
『私はこの前屋根裏で危ないところだったから、今回は喜八郎に塹壕でも掘ってもらおうかと思ってる。』
「そんな悠長なこと言ってて大丈夫か？…あ、あった！Aこっちだ！！」
そう言うと八左ヱ門は私の右手首を掴んで軽く跳躍し何かに飛び込んだ。

急に腕を引かれた私は反応が遅れてしまい、なかば八左ヱ門に引きずられるような形になった。
『えぇっ！？いきなりなに…わぁあっ！！？』
少し宙に落ちる感じがした後、私たちは暗くて深い穴の底にいた。
どうやら喜八郎が掘ったらしいその穴は、中はひんやり涼しくかなりの深さがあった。ここなら身を潜めるのに最適かもしれない。
ただ…

『なんでお前も一緒に落ちてるんだよ！』
「あっはは。わりぃ、あんま深く考えてなかったわ。」
早速頬に泥を付けた八左ヱ門が片手を頭の後ろに回しながらバツが悪そうな笑顔を浮かべる。

穴は深めに掘られてはいたがそこまで広さはなく、二人で入るにはせまい。

八左ヱ門が底に座るような形で私がその八左ヱ門の脚の上に向き合って座っているような体勢だ。
流石にこのままでいるわけにもいかないだろう…

『…全く、私は違う穴を探すから八左ヱ門はここにしたら？じゃ…！？』
跳躍して出ようとした時、穴の上の方から今一番恐れている人物の声がかすかに聞こえてきた。

「おおーい！かんえもーん！さぶろー！らいぞー？おっかしいなぁ、みんなどこに行ったんだろ？」
それは間違いなく五年い組の豆腐小僧こと、久々知兵助の声だった。
咄嗟に私はしゃがみ込み二人で声を殺し、兵助が過ぎ去ってくれるのを待った。

「はちざえもーん！Aー！もう一度校舎の方をよく探すか。」