そして、全てに (ページ12)

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10.5 女装実習ページ12

『さーぶろっ！ちょっと手伝って欲しいんだけど。』
今日は兵助から聞いていた女装での実習の日。
小袖に着替えたAは変装名人の同級生の部屋を訪ねた
。

部屋の中には女装を終えて可愛らしくなった三郎と雷蔵の姿があり、三郎は半ば呆れたような目でAを見やる。
「お前…まだ準備できてなかったのか。」
『だ、だってなかなか上手くいかなくて。どのくらい塗ったらいいのかもよく分からないし、三郎頼むよ〜。』
両手を目の前で合わせ懇願する。化粧はどうも苦手だ。

「はぁ。結局毎回私がやってるような気がするんだが…だからお前は色白いからこんなに白粉ははたかなくていいと言ったろう！紅もこんなに濃く塗らなくていい！」
お小言を言いながらも三郎はAの顔に丁寧に化粧を施していく。

『っふ、ちょ、ちょっと三郎、ふふっ…くすぐったい！』
「ズレるから動くな！お前が頼んできたんだろう。ちょっとは大人しくしていろ。」
三郎がAの眦に色を付けようと筆を片手にAの顎を掴み上向かせる。

2人がいい感じに戯れているのを雷蔵が横目で見ていた時またしても部屋の戸が開いた。
「三郎〜！仕上げやってくんねー？我ながら結構上手く行ったと思うんだけどさ。」
そこにいたのは皆と同じく小袖に身を包んだ八左ヱ門で、その顔は某先輩方を彷彿とさせるような化粧が施されていた。
はた、とAと八左ヱ門の目が合う。

『ぶッ！！あっはっはっはっはっ！！』
「だぁーからッ！！動くなと言ってるだろうがッ！！」
「おっ！！おまっ…！ヒトの顔見て笑い出すってどーゆーことだよっ！！」
「3人とも〜僕先に兵助達と行ってるからね。実習に遅れちゃうよ。」

その後3人は仲良く集合時刻に遅刻し、木下からの鉄拳を喰らったのであった。