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八左ヱ門の顔がどんどん近付いてくるので思わずギュッと目を閉じる。
(え、えぇッ!!)
ふと髪に何かが触れるような感覚がして、そろそろと目を開けると八左ヱ門が人差し指と親指で一枚の葉をつまんでいた。
「お前もひとのこと言えないだろ。頭に葉っぱ付いてたぞ。」そう言って片方の口角を上げてニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべている。
(…は?葉っぱ!?お、脅かすなよなもぉ〜!!)
『う、うっさい!!私は風呂行くから後は自分でやれ!!蓑虫頭ッ!!』
「へぶっ!!」
自分でも顔に熱が集中してるのが分かったので顔を背けつつ八左ヱ門の顔に手拭いを押し付け、風呂に向かって走った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「………っぶねぇ。」
葉を片手で握りながら、八左ヱ門は押し付けられた手拭いで自分の顔を覆う。
手拭いの隙間から見える頬や耳はこれでもかと真っ赤に染まっていた。
(もう少しで…口吸い…するとこだった…)
「自分でやめるって言ったのに、結局これかよ……。情けねぇ…。」
「ああ。」
「本当にね。」
「ッ!!!?え、ちょッ!!?ま、まさかおまえら…!?」
たまごとはいえ、忍者を目指している身でありながら同級生の気配にまたしても気付かなかった。彼女のことになると周りが見えなくなるようだ。
そこには同じ五年ろ組の三郎と雷蔵が立っていた。
「そりゃこんな廊下の真ん中でイチャコラしてたらイヤでも目に入るだろう?」
「僕達寝る前に厠に行っておこうと思っただけなんだけどね。」
「いっ、イチャコラなんて、してないだろっ!!」
「「へぇー。」」
「お、俺もう寝る!!!おやすみ!!!」
双忍の視線に耐え切れず、八左ヱ門はそそくさと自分の部屋に逃げ込んだのだった。
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作者名:結 | 作成日時:2023年6月27日 15時