2通話目�� ページ9
電話していた佐野先輩が、急に後ろを振り返った。
僕は慌てて電柱に隠れた。
多分見つかってないはず。
っていうか、何で急に振り返るんだよ…。
電柱の陰から少し顔を覗かせる。
佐野先輩は、キョロキョロ辺りを見回しながら、スマホを耳に押し当てている。
山中「何だ急に…」
ひとしきり周囲を見回すと、佐野先輩は突然走り出した。
山中「え？！ちょ、ちょっと…！」
僕も急いでその後を追う。
佐野先輩の後姿がどんどん見えなくなる。
あ、角を曲がった…。
僕もその角を曲がる。
しかし―。
山中「あれ…？！」
佐野先輩の姿はもうどこにもなかった。
どうして…。
まるで、僕がつけているのがばれて、それを撒くために走り出したように感じた。
なぜ急に…。
山中「スマホ…」
そうだ、先輩がスマホで話し出してからだ。
電話中に彼は急に辺りを気にしだして、そして走り出した。
まさか、電話の相手が佐野先輩に僕を撒くように指示を出したのか？
そんな馬鹿な。
尾行されていた佐野先輩本人が気付かないのに、この場にいない電話の相手が、なぜ尾行の事なんかわかるんだ。
多分たまたまだ。
たまたま周りが気になって、たまたま走りたくなっただけ…。
山中「そんなわけない…。あれは確かに、何かに気がついて、そしてそれから逃げるように走ったんだ」
本当に、スマホの相手が佐野先輩に助言したんじゃないだろうか。
それ以外、佐野先輩の行動の説明がつかない。
事件の時もそうだ。
しかし、それを確認する術は今のところない。
山中「はぁ…仕方ない。今日はもう引き上げよう…」
僕は、暗くなった町を一人帰路についた。
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作者名：milkssss | 作成日時：2019年6月30日 15時
