2通話目�� ページ7
平日の真昼間。
サングラスに大きなマスク。
帽子を目深にかぶり、長いコートを身にまとい、山中は電柱の陰に身を潜めた。
山中「この格好は、やりすぎたかな」
ショーウィンドウに移りこんだ自分の姿は、怪しさを通り越して逆に怪しくないまである。
いや、やっぱりないな。
山中はシャツに着替えると、再び電柱の陰に身を潜めた。
彼が見つめる先には、2階建てのアパート。
その103号室に、佐野と書かれたネームプレートが掛けられている。
えらく達筆だな…。
そう言えば、佐野先輩は字が書くのが好きだって言ってたっけ。
確かに、すごい腕前だ…。
"そこだけは"、尊敬できるかもな。
なんて感心している場合じゃない。
僕は今日、未解決事件の調査という名目で、非番の佐野先輩の素行調査に赴いている。
もしかしたら、電話の相手と会うかもしれない。
そうすれば、佐野先輩のあの推理の謎が解けるはずだ。
本人に聞いても、上手いことはぐらかされてしまったのだから、これぐらいのことしないと僕の気が済まない。
素行調査3時間経過。
山中「家から出てこない…。昼を回ってるって言うのに、もしかしてまだ寝てるんじゃ…」
僕は買ってきておいたサンドイッチを片手に、佐野先輩の部屋の玄関を双眼鏡で覗いてみた。
山中「あ！出てきた！！」
その時、佐野先輩の部屋の扉が開き、中から上パーカーの下スウェットというラフな姿で寝ぐせ爆発の髪型であくびをしながら佐野先輩が出てきた。
なんとだらしのない姿だろうか。
あれが、華の捜査一課の刑事の姿か…？
僕は理想と現実の波に押しつぶされそうになった。
いかんいかん。
そんなことは今は置いておいて、あの格好で佐野先輩はどこに行くつもりだ？
せめて髪型だけでもどうにかしてよ…。
佐野先輩は寝ぼけ眼で歩き出すと、近くのコンビニに入って行った。
山中「何買うつもりだ…？いや、金を下ろすだけか…？」
コンビニのガラスから、中の様子を観察する。
佐野先輩はATMで金を下ろしコンビニを出ると、またフラフラとどこかへ向かう。
物陰に隠れながら、僕はその後を尾行した。
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作者名：milkssss | 作成日時：2019年6月30日 15時
