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曽野「はぁ…でも、板垣所長の実力やったら、もっと依頼料たくさん入ってくるのに…」
そうなのだ。
板垣の推理力は、まさに神と言っても過言ではない。
その実力は、たった十五分話を聞いただけで、現場を見ることもなく解決できてしまう。
まるで、その場に居合わせ、事件の様子をつぶさに見ていたかのように。
だが、彼のものぐさもまた、天下一品。
所内にある固定電話に依頼の電話があれば、勝手に電話線を抜いてしまうし、依頼人が来ても、居留守を使うか寝たふりをして追い返してしまう。
その為、曽野少年が接客、そして電話は所長の手が届かない場所へ移し替えておいた。
しかし、彼のものぐさの噂は相当広まっているらしく、わざわざ依頼に来るもの好きはほとんどいなくなってしまった。
そのことが、曽野少年の頭を悩ませる。
何故、探偵事務所なんかやってるんだこの人は…。
それに、曽野少年の悩みはそれだけではなかった。
曽野「っていうか、所長がよく電話してる"刑事さん"から、正式にお仕事として依頼料もらいましょうよ！彼の事件だけで、何件解決してきたと思ってるんです？！全部合わせたら、僕ら億万長者になってる頃ですよ？！」
そうなのだ。
板垣所長が唯一その推理を披露する場所。
それは、スマホの相手にのみだ。
相手が誰かはもうわかっている。
直接会ったことはないし、顔も知らないが、なんでも若い刑事さんのようで、その刑事さんの話をスマホ越しに聞いて、所長は事件を解決している。
しかも、無償で！！
板垣「彼からお金は取らない。前にも言っただろ」
曽野「もぉ…。どんな人かは知りませんけど、なんでわざわざその刑事さんの手助け"だけは"するんです？」
いつもものぐさで面倒臭がりの彼が、唯一本気で推理をする相手。
一体所長とどういう関係なのだ。
板垣「…君と一緒だよ」
彼はそれだけ答えて、小説を顔に乗せて寝てしまった。
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作者名：milkssss | 作成日時：2019年6月30日 15時
