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山中「…。もう晩御飯食べた？」
つい、僕はそんなことを聞いてしまった。
なぜ、こんなことを言ってしまったんだろう。
曽野「いえ、まだですけど…」
山中「じゃあ、僕と一緒に食べない？近くにおいしいラーメン屋さんがあるんだ。もちろん僕の驕りで」
もちろん、それは佐野先輩に連れて行ってもらったお店だった。
前までの僕だったら、きっとこんな子放っておいてすぐ帰っただろうな。
でも、警視庁に来て、佐野先輩の下で働くようになってから、こういうところだけは、移ってしまったらしい。
それが良いことなのか悪いことなのか、今の僕には知る由もないが。
曽野「あぁ、でも所長の分のごはん、作らんと…」
山中「いつもあのホームズ…じゃなかった、所長にご飯作ってるの？」
曽野「はい…。あの人、僕がいないと、面倒くさがって何もしないんで…」
そうか…。
お互い、上司に恵まれなかったな…。
山中「今日ぐらいいいじゃん。曽野君一人に僕の依頼を押し付けたんだろ？ちょっとぐらい懲らしめてやらないと」
曽野「でも…」
山中「帰りに何かお土産でも買って帰ってあげれば？それならいいでしょ？」
曽野君は、しばらく考えると、ちょっと腑に落ちない表情ではあったが、小さくうなずいた。
一緒に行ってくれるってことで良いのかな。
山中「何ラーメンにする？」
曽野「豚骨…」
曽野君のお腹から、ぐうっという可愛らしい悲鳴が聴こえてきたので、僕は彼の背中を押して、ラーメン屋に向かうことにした。
事務所の小さな窓から、そんな二人の様子を小説片手に、ぼんやりと板垣所長が眺めていた。
板垣「まったく…僕の助手をたぶらかすなんて、部下の躾がなってないんじゃないの…？」
そうつぶやき、彼は自分の顔に広げた小説を乗せて眠りについた。
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作者名：milkssss | 作成日時：2019年6月30日 15時
