5通話目�� ページ28
一旦署に戻り、家路についたのはあれから数時間経ってからだった。
課長に報告、そして報告書のまとめを行い、今後の調査の進め方をミーティングしたのち、また報告書を記入…。
その繰り返しだ。
しかし、その間も佐野先輩は戻ってくることはなかった。
一体、何してるんだか。
まぁ、あのずぼらな先輩の事だから、あの近所のおいしい店でも探し出して舌鼓でも打っているに違いない。
僕は僕で、用事を済ませてしまおう。
そう思い、僕の足はあの奇妙な探偵事務所へ向かっていた。
―
既に、事務所の立て看板の上に、CLOSEの札が掛かっていた。
そりゃそうか。
もうすでに夜も更けているし…。
山中「今日は帰るか…」
そうつぶやき、僕は探偵事務所に背を向けて階段を降りようとした。
すると階段の下で、見覚えのある少年がこちらを見上げていた。
曽野「こんばんは〜」
山中「あ、あぁ。こんばんは」
あの後、この少年はどうしたんだろうか。
佐野先輩の電話の相手を特定できたのだろうか。
今日中に解決するって言っていたはずだけど…。
もし今日中に解決できなかった場合は、あのお金どうなるんだ…？
曽野「調査報告を聞きに来はったんですよね？」
山中「ええ…。まぁ…」
曽野「あのこれ…お返しします…」
そう言うと、曽野君は茶封筒を寂しげな表情で僕に差し出した。
階段を下り、僕はその茶封筒を受け取り、中を見てみた。
これは、昨日僕がこの子に渡したお金…！
曽野「ごめんなさい…。あの人の電話の相手、わかりませんでした…。なので、そのお金は全額お返しします…」
まぁ、当然と言えば当然だ。
僕は、この子に依頼をしたんじゃなく、あの居眠りホームズに依頼をしたつもりだった。
でも、今日のあの感じじゃ、あのホームズは我関せずを貫き通したんだろうな。
それで、全責任をこのワトソン君に押し付けたんだ。
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作者名：milkssss | 作成日時：2019年6月30日 15時
