3通話目�� ページ15
「ささ、どうぞ。部屋の中だけは綺麗にしてあるんで、安心してください」
確かに、埃一つない部屋だ。
掃除が行き届いている。
よほど腕のいい家政婦さんでもいるのだろうか。
奥へ進むと、客用のソファとテーブル、さらに奥に、事務用の机と一人掛けソファ。
その上に、顔に本を乗せて「ぐーぐー」と口で言っている人が寝ていた。
「あぁ、その人は気にしやんといてください」
少年はそう言って、僕をソファに座らせ、湯飲みにお茶を入れて出してくれた。
「失礼します」
そして、僕の向かいのソファに腰かけ、体を前に乗り出した。
「それでは早速なんですが、僕はこの事務所の助手兼雑用をやらせてもらってます、こういうものです」
ほほう。
若いのに、名刺まであるのか。
しかし、そこには手書きの紙切れが一枚。
『板垣探偵事務所 助手のワトソンこと曽野舜太』
山中「ワトソン…」
じゃあ、あの寝てるのがホームズ…？
曽野「どうですか？かっこいいでしょ？」
山中「あ、あはは…。うん…まぁ…はい…」
いやいや、ちょっと待ってくれ。
宮世よ、これは一体どういうことなんだ。
僕は小学校の探偵クラブにでも来ているのだろうか。
曽野「お客さん、立派なスーツですね！失礼ですけど、ご職業は？」
警視庁の刑事です！なんて言えるわけがない。
しかも捜査一課の刑事が、先輩の電話の相手を見つけてほしいなんて、赤っ恥もいいところだ。
だから、今日はしっかりS1Sバッヂを外し、ごく普通の商社マンという設定でこの探偵事務所へ赴いた。
山中「あぁ、あの、普通のサラリーマンです。商社勤めの…」
曽野「そうなんですかー！いい商社なんでしょうねー。そんなお高いスーツ着て！」
人のスーツをそんなじろじろ見るとは、ちょっと失礼な子だな。
そりゃこのスーツは高級ブランドの超お高いスーツだぞ…。
一体いくらしたと思ってるんだ…。
曽野「それでは、依頼内容の確認をさせてもらいたいんですけど」
えらく食い気味で来てくれるじゃないの。
本当に、大丈夫なのか…？
この探偵事務所…。
想像の遥か斜め上過ぎる…。
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作者名：milkssss | 作成日時：2019年6月30日 15時
