98 ページ7
.
「ハート。」
独房内の静寂に、自身の声が吸い込まれてゆく。
首輪のマークはチシヤとイッペーに確認してもらった。
しばらくすると電気錠が解除され、Aはゆっくりと外に出る。
隣の独房から出てきたチシヤを確認し、ほっと胸をなでおろした。
「なぁんだ、簡単じゃ〜ん。」
嬉しそうなウルミと目があった。
他の参加者も続々と廊下に姿を現す。
このターンで殺戮は起きなかったようだ。
余裕綽綽といった様子のチシヤの隣で、にこにこ笑うイッペーがこちらを見ている。
彼の無邪気な笑顔を見ていると少し胸が痛んだ。
『第2ターン、スタート。』
参加者たちが中央看監視所へ再び集結する。
ウルミチームのメンバーがありがとうございましたと互いに頭を下げている。
Aは壁に寄りかかり名状しがたい表情をしていた。
ふと、また絡みつくような視線を感じ目を見開く。
それはやはり、向かいに座り込む青年、バンダのものだった。
なんなのだろう。
彼に見られていると心が異様にざわつく。
口を真一文字に結んだAを見たチシヤがすっと動いた。
バンダからの視線が届かぬよう移動してくれたのだ。
Aが目尻を下げ、寄り添うように隣に立つチシヤを見上げた。
「何なんだよ！！」
怒声が聞こえたかと思えば、ネルシャツの青年、セトが監視所の床に勢いよく転倒した。
どうやら先程ペアを組んでいた粗暴な男性ーーキリウに突き飛ばされたようだ。
怯えるセトのもとへバンダが静かに近付いた。
何かを耳打ちしている。
「まだ殴られてぇみてえだな？ああ？」
イラついた様子のキリウが乱暴にセトの頭を掴み、そのまま顔面を躊躇なく殴りつけた。
至近距離でそれを見たAが眉間にしわを寄せる。
「さっさとマークを言えよ。おい。」
キリウが拳を振りかざす。
セトはクラブですと声を絞り出した。
「次はすぐに言えよ。」
セトを突き飛ばしたキリウはニヤニヤと笑う。
彼が目の前を通り過ぎた際、首輪のマークがちらりと見えた。
ダイヤ。
それに気付いたイッペーが声を上げそうになる。
隣のチシヤはそれをシッと制した。
「ここからがゲームの本番だね。」
このターンで一人、確実に死者が出る。
Aが深いため息をついた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 307人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
shiki(プロフ) - ドラマを見てこちらの小説に辿りつき読ませて頂きました！とても面白かったです！続きのお話も気になり読んでみたいです。よろしければパスワード教えて頂けますでしょうか😌？ (5月4日 13時) (
レス) id: 0b2b8118a9 (このIDを非表示/違反報告)
Miro(プロフ) - とても素敵なお話でした！よろしければパスワード教えて頂きたいです！ (12月11日 0時) (レス) @page47 id: fd725bb22b (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - 面白かったです！まだ大丈夫でしたらパスワード教えていただきたいです！ (12月3日 19時) (レス) id: a20e214c83 (このIDを非表示/違反報告)
のんき(プロフ) - とても面白かったです！続きのお話も気になるので宜しかったらパスワード教えて頂きたいです！m(_ _)m (10月3日 8時) (レス) id: da26660dd9 (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - ゆんさん» ゆんさん、ペントレに引き続きこちらの作品も読んでくださったのですね！とても嬉しいです！ありがとうございます🥲メッセージにてパスワードお送りしましたのでご確認ください🐈💐 (5月18日 1時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おこめ | 作成日時：2023年2月21日 1時
