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もくもくと立ち昇る黒煙と爆発しながら墜落してゆく飛行船。
それは、圧倒的な強さでプレーヤー達を蹂躙した♠︎のキングが没したということを示していた。
Aが固唾を飲んでそれを見つめている。
しばらくすると、アリスが足を引きずるウサギを支えながら歩いてきた。
「……やったんだね。」
微笑みながらそう呟いたAを見たアリスがこくりと頷く。
肩を借りて歩いていたウサギは一度口を結び、そして悔しそうに話し始めた。
「A……クイナと、アンが……」
「え……?」
ウサギが気まずそうに視線を逸らす。
Aの顔からさあっと血の気が引いた。
「……まだ息があるかもしれない。」
ごくりと唾を飲み込むA。
「アリスくんとウサギちゃんは、最後のゲームに……行くんだね。」
「ああ。」
「よろしくお願いします。」
いつの間にか上空に現れた最後の飛行船を確認し、Aは深々と頭を下げた。
「必ず、帰ろう。」
アリスはまっすぐな声でそう答えると、またウサギを支えながら駅前のビルへと進んでいった。
二人を見送ったAがそわそわと視線を動かす。
隣で浅く呼吸をするチシヤが行ってきなよと言って頷いた。
Aは彼と崩壊したビルを交互に見つめたあとすくと立ち上がった。
「……ごめんチシヤ、行ってくる。」
「ん。気をつけてね。」
ひらひらと手を振るチシヤに必ず戻ってくるからと言い残し、Aは走り出した。
瓦礫を避けながら周囲を見回す。
爆発があったであろうビルの脇を見たAがはっと息を飲んだ。
路地に倒れる人影を発見し駆け寄る。
「クイナっ!!アンさん!!」
「……A?」
腹部から大量の血を流して倒れるクイナ。
隣に横たわるアンは既に息をしていないように見える。
Aが二人の間に入りそっと腰を落とす。
「クイナ、クイナ……!」
「A、無事だったんやな……良かった……」
「ごめんねクイナ、助けられなくて……!」
自分の手を握り涙を流すAに、クイナはええんやでと微笑んだ。
「チシヤには会えたんか?」
「うん、会えたよ。すぐ近くにいる。」
「……安心したわ。そしたらA、チシヤと一緒に居ぃや。うちらはもう動けんから……」
「……クイナ……」
Aが俯き、涙を拭う。
左手でクイナの手を、右手でアンの手を握り、静かに歌い始めた。
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shiki(プロフ) - ドラマを見てこちらの小説に辿りつき読ませて頂きました!とても面白かったです!続きのお話も気になり読んでみたいです。よろしければパスワード教えて頂けますでしょうか😌? (5月4日 13時) (レス) id: 0b2b8118a9 (このIDを非表示/違反報告)
Miro(プロフ) - とても素敵なお話でした!よろしければパスワード教えて頂きたいです! (12月11日 0時) (レス) @page47 id: fd725bb22b (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - 面白かったです!まだ大丈夫でしたらパスワード教えていただきたいです! (12月3日 19時) (レス) id: a20e214c83 (このIDを非表示/違反報告)
のんき(プロフ) - とても面白かったです!続きのお話も気になるので宜しかったらパスワード教えて頂きたいです!m(_ _)m (10月3日 8時) (レス) id: da26660dd9 (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - ゆんさん» ゆんさん、ペントレに引き続きこちらの作品も読んでくださったのですね!とても嬉しいです!ありがとうございます🥲メッセージにてパスワードお送りしましたのでご確認ください🐈💐 (5月18日 1時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おこめ | 作成日時:2023年2月21日 1時