127 ページ36
.
「ニラギ、あんたの言葉がいちばんこたえるわ。引きずり込まれそうだよ！」
Aが左側の車に隠れるアリスをチラリと見た。
悲痛な表情で声を発する彼もまた、亡くした大切な存在を想っているのだろう。
「でも、俺はもう、弱くて自分勝手な俺には戻りたくねえ。」
決心したように立ち上がるアリス。
「乗らない。俺はこの引き金を自分のためには引かない。」
アリスは散弾銃をゆっくりとおろした。
その様子をじっと見つめていたチシヤが、なにかを思い出したように俯く。
Aもまた、思考を巡らせ目を閉じていた。
「フッ……なんか、しらけちまったな……」
アリスと同様、ニラギが構えていた拳銃をおろす。
「アリス……何してるの？」
一同が肩の力を抜こうとしたとき、ある女性が姿を現した。
ニラギが笑みを浮かべ、おろしていた拳銃の銃口を彼女へ向けた。
「そういや、てめえがいたんだっけな。」
「ウサギちゃん……！」
無防備に立つウサギの至近距離に二発、弾丸が発せられた。
彼女は優れた反射神経でそれをかわすが、間一髪といったところだった。
「ウサギ！やめろ！ウサギは関係ないだろ！！」
「ゲームにはヒロインが必要なんだよ。盛り上げ役だ。」
「何言ってんだよ！」
Aは迷っていた。
ウサギのもとへ駆けつけようか、ニラギの四肢を打って止めようか。
先日のゲームでは運良く標的に銃弾を打ち込めたが、また上手くいくとは限らない。
万が一ニラギを殺してしまったら。
いや、それも致し方ない。
やはりニラギを止めなければこの状況は打破できない。
「てめえを殺せば、俺たちはまた同族に戻れるんだ。」
Aがすっと息を吸い、立ち上がる。
素早い動きで小型拳銃を両手で構えた。
「もう、1人は嫌だ。」
ニラギの呟きを聞いたAがグリップを握る力を一瞬緩める。
それと同時に、彼女の腕はぐっと引かれた。
ウサギが死を覚悟しきつく目を閉じる。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 307人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
shiki(プロフ) - ドラマを見てこちらの小説に辿りつき読ませて頂きました！とても面白かったです！続きのお話も気になり読んでみたいです。よろしければパスワード教えて頂けますでしょうか😌？ (5月4日 13時) (
レス) id: 0b2b8118a9 (このIDを非表示/違反報告)
Miro(プロフ) - とても素敵なお話でした！よろしければパスワード教えて頂きたいです！ (12月11日 0時) (レス) @page47 id: fd725bb22b (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - 面白かったです！まだ大丈夫でしたらパスワード教えていただきたいです！ (12月3日 19時) (レス) id: a20e214c83 (このIDを非表示/違反報告)
のんき(プロフ) - とても面白かったです！続きのお話も気になるので宜しかったらパスワード教えて頂きたいです！m(_ _)m (10月3日 8時) (レス) id: da26660dd9 (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - ゆんさん» ゆんさん、ペントレに引き続きこちらの作品も読んでくださったのですね！とても嬉しいです！ありがとうございます🥲メッセージにてパスワードお送りしましたのでご確認ください🐈💐 (5月18日 1時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おこめ | 作成日時：2023年2月21日 1時
