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「妖精とかそういうのだと思った。」
「ふふ。ヘイヤちゃんって結構ロマンチストなんだね?」
「ちが、違うから!Aがめちゃくちゃ綺麗で、そう思ったの!」
ヘイヤは顔を赤くしてそっぽを向いた。
枯れ葉を踏む足音が大きくなる。
先程出会った少女、ヘイヤはどうやら女子高校生のようだ。
警戒を解いた彼女は自分から自己紹介をしてくれた。
渋谷で友達と遊んでいたらこの世界に来てしまったこと。
初めて参加したゲームで足を失ったこと。
「小田急のさ、この前出てた……化粧品のポスターみたいだった。」
「ん?ああ、あれね。見てくれたんだ。嬉しい。」
Aは自身が広告塔を務めたブランドを思い出す。
広告の掲載期間は短かったのだが、年頃の少女に認知されていたとわかり嬉しくなった。
「ねえ。Aは一人なの?」
しばらく歩いたのち、森が開けたところでヘイヤは足を止めた。
「……少し前まで一緒に行動してた人達がいたよ。大体はぐれちゃったけど。」
「ふうん……そんな奴がさっきまでここにもいたよー。」
「え?それって……」
Aは言いかけて、言葉をつまらせた。
目の前の大木に寄りかかって静かに眠る人物に見覚えがあったからだ。
「……アグニさん?」
「?!A、アグニのこと知ってるの?」
生きていたんだーー
傷だらけで眠る彼を見て、Aは目頭がかあっと熱くなるのを感じた。
あの日、命を落とした大勢の中に彼も入っていたのだと、思っていた。
「……ここに来る前、何度か助けてもらったの。」
「そーなんだね……」
「優しい、人だよ。アグニさんは。」
Aはショートパンツのポケットに入ったハンカチをぎゅっと握り締めた。
何故かヘイヤが誇らしげな顔をして頷いている。
「怪我してるの?」
「うん……しばらく起きないんだ。」
ヘイヤが辛そうな表情で口を結んだ。
「そっか。早く目を覚ますといいね。」
「絶対、絶対大丈夫。だってアグニだもん。」
ああ、この子にとって彼は大切な人なんだ。
わたしにとっての、チシヤのように。
Aは目を赤くして俯くヘイヤの手を優しく握り締めた。
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shiki(プロフ) - ドラマを見てこちらの小説に辿りつき読ませて頂きました!とても面白かったです!続きのお話も気になり読んでみたいです。よろしければパスワード教えて頂けますでしょうか😌? (5月4日 13時) (レス) id: 0b2b8118a9 (このIDを非表示/違反報告)
Miro(プロフ) - とても素敵なお話でした!よろしければパスワード教えて頂きたいです! (12月11日 0時) (レス) @page47 id: fd725bb22b (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - 面白かったです!まだ大丈夫でしたらパスワード教えていただきたいです! (12月3日 19時) (レス) id: a20e214c83 (このIDを非表示/違反報告)
のんき(プロフ) - とても面白かったです!続きのお話も気になるので宜しかったらパスワード教えて頂きたいです!m(_ _)m (10月3日 8時) (レス) id: da26660dd9 (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - ゆんさん» ゆんさん、ペントレに引き続きこちらの作品も読んでくださったのですね!とても嬉しいです!ありがとうございます🥲メッセージにてパスワードお送りしましたのでご確認ください🐈💐 (5月18日 1時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おこめ | 作成日時:2023年2月21日 1時