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ドレンボルトを外せば、トトト、と小気味よい音をたてエンジンオイルが流れてゆく。
なんかすいません。汗を拭うタッタが小声でそう言う。
「こんなこと手伝わせちゃって.....」
「え?なんですかー?」
車体の下から顔をのぞかせたAが笑顔で返事した。
彼女の顔はところどころ黒く汚れている。
タッタが申し訳なさそうに眉を下げた。
「汚れちゃうんで.....俺やりますから。」
「いやいや、2人でやった方が早いですよ!」
「.....すいません。」
廃油を運ぶAが頭をふった。
「謝らないでください!こういう時はありがとうでいいんですよ。」
Aがオイルジョッキに新しいエンジンオイルを注ぐ。
その手際の良さに驚いているタッタが、複雑な顔をしたあとぺこりと頭を下げた。
「ありがとうございます.....」
「どういたしまして!あ、タッタさん、そこのパーツクリーナー取ってもらえますか?」
「.....あの、そのタッタさんっていうの、なんかむずむずするんでやめませんか.....?」
「え?あ.....そうだね、お互い敬語やめよっか。」
ふふと微笑むAのあどけない笑顔。
「でもさ、いつも1人でこれ全部やるの大変じゃない?」
「え、いやまあ、大変だけど.....俺がここでできるのこれくらいだし.....」
「謙遜しなくていいのに。理由はどうあれ誰かのために頑張ってるタッタはすごいよ。」
「.....うっす.....」
耳まで真っ赤に染まったタッタの顔を見てAがまた笑う。
芸能の話題には疎い彼だったが、確か目の前の彼女は“業界にファンが多数いる”ようなことを何かのバラエティで見た記憶を思い出した。
謙虚で明るい人だと。
本当にその通りだと思った。
彼女は外見だけでなく中身も美しいのだと、付き合いが浅くともそう感じられた。
「動いたらお腹すいたね。タッタは好きな食べ物とかある?」
「んー、プリンかな.....あとはチーズとか.....」
「わたしもプリン大好き!コンビニ寄るといつも焼きプリン買っちゃうんだよね〜」
嬉しそうにはしゃぐA。
そんな彼女が思っていたよりとても身近な存在に感じて、タッタもつられて笑った。
「ああーわかる!あれめちゃくちゃうめぇよなあ。」
「でしょでしょ。あープリン食べたくなっちゃったな。厨房に忍び込んで作っちゃう?」
にやっと笑うA。
なんて可愛らしい人なのだろう。
タッタはまた顔が熱くなるのを感じ、それを誤魔化すためにタオルで顔を拭った。
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おこめ(プロフ) - はーとさん» 勿体ないお言葉😭😭嬉しいです!チシヤの可愛い口、表現できてますかね…?!主人公ちゃんも反対の位置にほくろがあるんです(*' '*)気まぐれにイラストあげるかもしれないのでまた見てやってください🥹 (2023年2月20日 23時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
はーと(プロフ) - おこめさん» お大事に( ᵒ̴̶̷̥́ωᵒ̴̶̷̣̥̀ )てか絵が上手すぎません?!チシヤの口が可愛い🤍 ̖́-夢主ちゃんもホクロがあるんですね! (2023年2月20日 22時) (レス) @page45 id: f292a3492c (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - はーとさん» はーとさん、お心遣い感謝です(;;)リハビリも兼ねてゆっくり執筆していきますのでどうぞよろしくお願いいたします🐈💐 (2023年2月20日 22時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
はーと(プロフ) - おこめさん» 事故💦怪我が早く治りますように(T ^ T)更新も楽しみにはしてますが、無理せず頑張って下さい (2023年2月20日 16時) (レス) @page44 id: f292a3492c (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - ayaさん» ayaさん、いつもコメントありがとうございます!甘々チシヤ、完全に作者の好みなのですが、お気に召していただけたようで幸いです🐈大切に執筆している作品なのでそう言ってくださるととても嬉しいです( ´͈ ᵕ `͈ ) (2023年2月2日 22時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おこめ | 作成日時:2023年1月27日 1時