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廊下で出くわしてしまった男を無視しようかと、その脇を通り過ぎようとした時だった。
ひしと掴まれる左の手首。
Aは眉間に皺を寄せ、自身の手首を掴む男を睨みつけた。
「離してくれない?」
忌避の意を込めてそう伝えると、ニラギはほくそ笑んで手首を掴む力を強くした。
Aは手汗がじわりと出てくるのを感じ身を捩った。
しかしそんなことでは離してくれるはずは無く、ますます笑みを深め自身の方へAを引き寄せるニラギ。
やめて。触らないで。
Aは唇のはしを噛んだ。
「まぁまぁ俺とちょっと遊んでいけよ。」
「.....あなたと話はしたくない。」
「そう言うなって。一緒に気持ちよくなった仲じゃねぇか。」
ぞわり。
自分の中に無理やり入ってくる彼を思い出し、背筋が冷たくなった。
「いいねぇその表情.....なァA、俺の女になれよ。」
アイブロウの装着された眉をつり上げる。
だめだ、相手のペースに合わせては。
この男は自分の反応を見て楽しんでいるのだ。
Aは顔を逸らしすっと表情を消した。
「.........」
「んだよつまんねぇな、こっち向けよ。」
顎をつかまれ強制的にニラギと対面させられる。
触れられている手をぱしりと払った。
「あなたのことは何も思わない。」
「.....ああ?」
「もう話しかけないで。」
精一杯、我慢して伝えた言葉だった。
彼に酷いことをされてから日は浅く、無の境地に達するなんてとてもできなかった。
しかし無用に刺激したくない。
そんなことを知ってか知らずか、ニラギはまたAの顎をくいと掴んだ。
「恨んでんのか?俺のことを。」
「いいえ、何も。」
「恨めよ?恨んで恨んで、憎悪に満ちたお前の顔が見てぇんだよ。」
何を言うんだこの男は。
Aはすっと息を吸い込んだ。
「許すから、あなたのこと。だからもう関わらないで。」
「.......」
無表情のまま固まってしまったニラギを退け、Aは足早にその場を後にする
「.........善人ぶりやがってよォ。」
ニラギは拳を壁に叩きつけた。
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おこめ(プロフ) - はーとさん» 勿体ないお言葉😭😭嬉しいです!チシヤの可愛い口、表現できてますかね…?!主人公ちゃんも反対の位置にほくろがあるんです(*' '*)気まぐれにイラストあげるかもしれないのでまた見てやってください🥹 (2023年2月20日 23時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
はーと(プロフ) - おこめさん» お大事に( ᵒ̴̶̷̥́ωᵒ̴̶̷̣̥̀ )てか絵が上手すぎません?!チシヤの口が可愛い🤍 ̖́-夢主ちゃんもホクロがあるんですね! (2023年2月20日 22時) (レス) @page45 id: f292a3492c (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - はーとさん» はーとさん、お心遣い感謝です(;;)リハビリも兼ねてゆっくり執筆していきますのでどうぞよろしくお願いいたします🐈💐 (2023年2月20日 22時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
はーと(プロフ) - おこめさん» 事故💦怪我が早く治りますように(T ^ T)更新も楽しみにはしてますが、無理せず頑張って下さい (2023年2月20日 16時) (レス) @page44 id: f292a3492c (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - ayaさん» ayaさん、いつもコメントありがとうございます!甘々チシヤ、完全に作者の好みなのですが、お気に召していただけたようで幸いです🐈大切に執筆している作品なのでそう言ってくださるととても嬉しいです( ´͈ ᵕ `͈ ) (2023年2月2日 22時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おこめ | 作成日時:2023年1月27日 1時