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ゲームに参加するクイナ達を見送ろうと、Aはビーチのエントランスへ向かった。
途中の廊下でひそひそと話し合う少女たちに出くわし、なんとなく会釈をしてすれ違う。
「あの!」
呼び止められ、足を止める。
「あの.....歌花Aさんですよね?」
肩まである髪をハーフアップにした少女がAに駆けより、控えめに右手を差し出した。
「この前のドラマ、ずっと見てました。最終回すごく感動して.....あの、私、ファンなんです。」
俯き早口でそう言うと、差し出した手をずいとさらに前へ突き出した。
握手を求めているのだろう。
Aはかすかに震えるその手を優しく握る。
「ありがとう。あのドラマはわたしもすごく思い入れがあって、大切な作品なの。すごく嬉しい。」
「っ、そうなんですね!最後のシーンが切なくてとっても好きで.....録画したの何度も観てます!友達も.....そこにいる子もそうなんですけど.....」
少女がちら、と後ろをふりかえる。
ボブヘアーの少女があっと小さく声をもらし、こちらに歩いてきた。
「えっと、お名前は?」
「アサヒです!」
アサヒと名乗った少女が同じように握手を求める。
Aが快く対応すると、彼女は頬を赤く染め嬉しそうに笑った。
「こっちはモモカです。私たち、毎週モモカの家でドラマを絶対リアタイしてたんです。いつもすっごくすっごく楽しみでした!」
「アサヒちゃんとモモカちゃんね。ありがとう。」
Aは数時間前までいろいろと悩んで胸につっかえていたものが、すっと消えていくのを感じた。
こうして元の世界の話をしていると、残酷なこの状況にいることを少しでも忘れられる。
現実逃避だといわれても構わない。
こういう時間が必要なのだ。
少女たちもそうだといいなと、Aは思った。
「これはね、まだ内緒なんだけど。」
悪戯っぽく笑うAがぱちりとウインクする。
「続編の映画を撮影中なの。来年の春に公開だから、楽しみにしててね。」
「えっ!.......はい!!絶対観にいきます!!」
「めちゃくちゃ嬉しい.....モモカ続きありそうって言ってたもんね!」
きゃあきゃあと喜ぶ少女たちを見て微笑んだAが、じゃあわたし行くね。と手を振った。
どうか、彼女たちが無事に帰れますように。
心の底からそう願うAの後ろ姿を、少女たちが、すこし泣きそうな顔で見つめていた。
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おこめ(プロフ) - はーとさん» 勿体ないお言葉😭😭嬉しいです!チシヤの可愛い口、表現できてますかね…?!主人公ちゃんも反対の位置にほくろがあるんです(*' '*)気まぐれにイラストあげるかもしれないのでまた見てやってください🥹 (2023年2月20日 23時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
はーと(プロフ) - おこめさん» お大事に( ᵒ̴̶̷̥́ωᵒ̴̶̷̣̥̀ )てか絵が上手すぎません?!チシヤの口が可愛い🤍 ̖́-夢主ちゃんもホクロがあるんですね! (2023年2月20日 22時) (レス) @page45 id: f292a3492c (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - はーとさん» はーとさん、お心遣い感謝です(;;)リハビリも兼ねてゆっくり執筆していきますのでどうぞよろしくお願いいたします🐈💐 (2023年2月20日 22時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
はーと(プロフ) - おこめさん» 事故💦怪我が早く治りますように(T ^ T)更新も楽しみにはしてますが、無理せず頑張って下さい (2023年2月20日 16時) (レス) @page44 id: f292a3492c (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - ayaさん» ayaさん、いつもコメントありがとうございます!甘々チシヤ、完全に作者の好みなのですが、お気に召していただけたようで幸いです🐈大切に執筆している作品なのでそう言ってくださるととても嬉しいです( ´͈ ᵕ `͈ ) (2023年2月2日 22時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おこめ | 作成日時:2023年1月27日 1時