27 ページ28
.
「.....ん.....」
カーテンの隙間から差し込む光が眩しい。
Aはゆっくりと目を開いた。
いつの間にか夜が明けている。
「おはよ。少しは眠れた？」
「.......？！」
「あれ、覚えてない感じ？」
声のする方へ視線を移す。
チシヤが隣のベッドで膝枕をしてこちらを見ている。
Aは思わず布団にもぐった。
「おはよう。.....ちゃんと覚えてるよ」
「そう、良かった。」
ふぁ、と欠伸をするチシヤの顔を盗み見る。
初めて会った時よりも随分リラックスしている様子で、Aは少し嬉しくなって微笑んだ。
「彼、戻ってきたみたいだけど。」
眠たそうに目を擦りながら窓の方を顎で指すチシヤ。
数名のグループが疲れ果てた体を引きずりながら歩いてくる様子が見えた。
その中に天龍の姿を確認すると、Aはほっと胸を撫で下ろした。
「戻らないと怒られちゃうんじゃない？」
「うん、そうだね.....」
「なんて言い訳するのかなぁ。」
「.........倫也さんは仕事仲間だから、そういう関係じゃないよ。」
Aが不貞腐れたように眉間に皺を寄せる。
それを見たチシヤがへぇ〜と口角を上げた。
「ありがとう、一緒にいてくれて。」
「別に感謝されるようなことはしてないけどねぇ。」
「.....ううん。昨日はちょっと、色々辛かったから.....」
Aが目を伏せながらチシヤの手をそっと握る。
その温かさを記憶するように、しばらく無言で目を閉じた。
「何が正しくて、この先どうすればいいか分からなかったけど.....わたし、頑張って生き抜こうと思う。」
「.........そう。」
「だからチシヤも、死なないでね。一緒に帰ろう、元いた世界へ。」
「.....元の世界が恋しい？」
「戻りたいよ。.....チシヤは違うの？」
「どうかなぁ.....」
天井を見つめるチシヤ。
Aは彼の手を強く握ると、自分の胸の前にもっていった。
「もし、記憶が無くなったとしても。わたしはチシヤを見つけ出すよ。きっと。」
「.....純粋なんだね、Aは。」
「そんなことないよ。一応芸能界で色々見てきたもん。」
じゃあ、と言い立ち上がるA。
「また後でね。ありがとうチシヤ。」
「.....ああ。」
Aがにこりと笑い部屋から出ていく。
しばらく離された手を見つめていたチシヤだったが、力なくベッドに埋もれると、そのまま意識を手放した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 200人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
npng01(プロフ) - 初めまして。作者さんのお話にハマってしまいました。パスワードを教えていただきたいです☺︎ (4月28日 8時) (
レス) id: c93a1c32d7 (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - 初めまして。チシヤが推しなので楽しく読ませて頂いてます！良ければパスワードを教えていただきたいです！ (9月20日 17時) (レス) id: d73fb9ea10 (このIDを非表示/違反報告)
くろねこ(プロフ) - このお話とても大好きです！良ければパスワード教えて頂けませんか（т-т） (7月15日 8時) (レス) id: 3340ef99aa (このIDを非表示/違反報告)
日笑(プロフ) - とても楽しく読ませて貰っています！ぜひパスワードを教えて頂きたいです！！これからも応援しています！！ (2023年3月4日 21時) (レス) id: d4c1bf10fe (このIDを非表示/違反報告)
桃佳(プロフ) - 初めまして。いつも楽しく読ませていただいてます！宜しければパスワードを教えていただきたいです！よろしくお願いします！ (2023年2月7日 0時) (レス) id: bb9872c217 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おこめ | 作成日時：2023年1月14日 9時
