セツナサノ ○A○RA○SHI○ (ページ36)

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「国民的アイドルって、案外ヒマなのね」

そんなことを言うお前に会うのは一ヶ月ぶり。

ちっとも連絡がこないことに苛立った俺は

偶然を装って予備校の近くでお前を待った。

そこからお前の家までの道のりを

車で送るのは、今日が３度目。

これからが大事な受験生に

何かを求めたかったわけじゃない。

俺が与えられるものなんてない。

ただお前に会いたい。

時間が合えば、必ず迎えに言っていた。

将来は医者になって

海外で活動したいと話すお前が羨ましかった。

夢を描いて

それに向かってひたむきに努力する姿は

まるで昔の自分を思い出しているようで

元気をもらっているのは

俺の方だった。

「そういえば、ドラマ見たよー。かっこいいねぇ」

素直に褒められれば嬉しいのに

俺は大人なんだっていうプライドが邪魔をして

「受験生がドラマなんかにハマってんなよ(笑)」

照れ隠ししかできない俺に

「入学以来、誰にも譲ったことないんだよ」

そう言って

テストのたびに学年トップの成績表を持ってきたお前を

頼もしいとさえ思う。