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「はーい、そこまで。Aさんの負けね」
いままで口を開かなかった乱歩が詰まらなさそうに言う。
冷めた目でAを見つめ、ため息をつくと、Aはうれしそうに笑った。
「はは、幾らかけてたっけ__うまか棒一年分?」
「ねるねる一年分」
「あれ、ちょっと値段上がってなあい?」
先ほどまでの緊張感は何処に行った…。
いや、それほどよりも、なぜこの二人はまるで知り合いかのように仲良く話しているのか。
誰も頭が追い付いていなかった。
この短い時間の中で飛び交った疑問の多さに、頭が痛くなる探偵社一同。
__とりあえず、一件落着?
部屋の中央で立ち尽くしていた太宰は、全身の力が抜けたのか、ヘナヘナと座り込んでしまい、そのまま泣き出した。
そちらも二度見しながらそれぞれ動き始める。
「あの、太宰さん、大丈夫ですか?」
「…あづしぐんっ」
敦は思った_こんな太宰さん、見たことがない_と。
なおも泣き続ける太宰の背をなでながら鏡花に救援を求める。
__太宰さんが泣き止まないんだけど!?
__頑張って。
そっとガッツポーズをされた。
先ほどの宣言通り、国木田さんは業務に戻っている。
この状況で普通に仕事ができることに関心を通り越して心配すら覚えるが、今の敦にはそんなことどうでもよかった。
この泣き続ける22歳をどうにかしてくれ。
「太宰?大丈夫かい?」
「与謝野女医!」
声をかけたのは、騒ぎを聞きつけて医務室から出てきた与謝野だった。
与謝野は今まで医務室で仕事をしていたらしく、此処にはいなかったため、ほとんど状況は知らない。
「とりあえず涙拭きな。…けがは、そこまで酷くないようだけど、治療するからこっちへおいで」
うなずいた太宰は、渡されたタオルに顔をうずめながら立ち上がる。
其処に、ひょいと表れたのは乱歩とおしゃべりをしていたAだった。
こめんね、ごめんね_と謝りながら太宰の頭をなでるA。
その顔を見て与謝野は目を見開いた。
「なんで…Aさん」
「晶子ちゃんか、大きくなったね。治ちゃんをお願い」
「__ああ」
数拍おいて与謝野が返事をする。そして二人は医務室へと消えて行った。
その様子を見届けてから、Aはその様子を見ていた人たちに向き直った。
「この度は、ご迷惑をおかけして__」
口から出てきたのは謝罪の言葉だった。
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みぃ(プロフ) - 紅羽さん» コメントありがとうございます!頑張ります! (2019年1月18日 22時) (レス) id: 48f4ee6765 (このIDを非表示/違反報告)
紅羽 - とっても面白いですね!更新頑張って下さい!応援してます! (2019年1月11日 20時) (レス) id: a17c6e8d22 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - yamamia38さん» こちらこそありがとうございます! 更新遅くて申し訳ございません。これからもよろしくお願いします! (2018年12月18日 18時) (レス) id: 48f4ee6765 (このIDを非表示/違反報告)
yamamia38(プロフ) - ヤバい!面白いですね!投票とお気に入り追加させていただきました!太宰さん推しだから嬉しいです。有難うございます! (2018年12月16日 22時) (レス) id: bb32575fc9 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 青森県と大阪府さん» コメントありがとうございます!ちょっと今日本にいないので更新はできないので、ごめんなさい。勧めてまでくださり…照れます。これからも、よろしくお願い致します。 (2018年10月23日 23時) (レス) id: d688bcfef3 (このIDを非表示/違反報告)
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