学園祭 一日目 午後の部 ページ10
*
轟焦凍と、火神Aが血の繋がっている兄妹であることを知っている人はほとんどいない。
友人はもちろん、教師も知らないし、親戚でさえ知らない人がいるくらいだ。
ちなみに火神、というのは母親の姓だ。私のお母さん、火神レイコは、ヒーローのサイドキック仲介、派遣会社を女性であるにもかかわらず一人で切り盛りし、そこそこ成功している。
平たく言えば、私は轟焦凍の父親、エンデヴァーがお母さんと浮気をした際に出来た子供である。
お母さんはいわゆるシングルマザーということになるが、一度離婚をしているので、周りからは別れた夫の子供だと思われているらしい。不幸中の幸いである。
エンデヴァーの妻は、私とお母さんのことを知っていたようだが、なにか言及してくるということはなかった。
現に、お母さんは養育費を請求しなかったし、私を産む代わりにエンデヴァーとは一切関わりを絶ったからである。だから、私は自分の父親に画面越しでしか会ったことがない。
お母さんはとてもおおっぴらな性格なので、小さい頃からその辺りの事情は少しずつ理解していた。そのせいか、特に自分の境遇に引け目を感じたり、ショックを受けたりすることはまるでなかったと思う。
むしろ、私たちの存在にこだわり続けていたのは轟家の方ではないか。
そのことを思い知らされたのは、エンデヴァーの妻が入院した、という知らせを受けてからである。
中学校の入学式。代表の言葉を読み上げるために壇上に登った時に見た、こちらを恐ろしい形相で睨みつけていたアイツの顔は、今も脳裏に焼き付いている。
私は、アイツから放射された憎しみに戸惑い、怒りすら感じたほどだ。
自分と同じ年齢で、同じ名門中学校へ入学したという事実も、アイツにとって耐え難いことだったみたいだ。
とはいっても、後で冷静になって考えてみればアイツの憎悪も理解できないことはないが、それでも私にはなんの罪もない。私まであんな風に見られる必要は無い、と自分に言い聞かせたけれども、アイツの憎しみに満ちた表情は、今でも私の中に残り続けている。
始めは憂鬱だったが、三年間ずっと別のクラスだったし、そのうちアイツの存在も気にならなくなって、すっかり忘れていた。
アイツはアイツで私のことを完全に無視していたから、私たちの接点は全くと言っていいほどなかったのである。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 64人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
正義のヒーロー赤マフラーZ(プロフ) - いちごさん» コメントありがとうございます！私もいちごさんの作品の作品を拝見させて頂いています。友達申請、させていただきますね。 (2017年8月12日 19時) (
レス) id: 90857948a4 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - こんにちは！！思春期+密室や気になるアイツはノーブラ野郎を書いている者です……！いつも愛読させていただいてます！！！！これからも更新頑張ってください！友達申請とかしてもいいですか……？？ (2017年8月12日 18時) (レス) id: a88477f61c (このIDを非表示/違反報告)
正義のヒーロー赤マフラーZ(プロフ) - あーるさん» コメントありがとうございます。物語シリーズ、一時期ハマってました(笑) (2017年8月12日 16時) (レス) id: 90857948a4 (このIDを非表示/違反報告)
あーる - 面白かったです！まさかの某迷子Pである。いつか、「かみまみた」って言ってくれるかなぁ。 (2017年8月12日 15時) (レス) id: 5ac2a3e4cf (このIDを非表示/違反報告)
正義のヒーロー赤マフラーZ(プロフ) - 麥さん» すみません！私としたことが外し忘れていましたm(_ _)mご指摘ありがとうございます！ (2017年8月12日 13時) (レス) id: 90857948a4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：正義のヒーロー赤マフラーZ | 作成日時：2017年8月12日 12時
