〃 ページ29
*
「ちゃんと青春してた高校生なんて、どれくらいいるのかね？ 私なんて部活もしてなかったし、勉強も
「ほとんどがそうだろ 」
「そうかなぁ。他人は青春してるように見えるんだよね、どうしても。あ、でも、今してるかも＿＿＿＿青春。」
「え？ 」
轟がきょとんと首を傾げるのを見て、思わず小さな笑がこぼれた。
「だってさ、これって凄く青春ぽくない？ 高校の文化祭の一番終わりになって、ようやく今まで口の聞いたことがなかった憧れのクラスメイトと話してる 」
彼は一瞬絶句したように見えたが、つられて笑い始める。
「そうだな。しかも腹違いのきょうだい。超ドラマチックだ。まるで学園祭でやる劇みたく 」
「青春じゃん 」
二人で自虐的な笑いを漏らす。
「じゃあ、もしドラマならこの先はどうなるんだろうか 」
轟の呟きを聞き、自分も頭を働かせる。
「学園祭が終わりとともに、物語は終わるよ。きっと、世界でたった二人のきょうだいどうしなんだから、今日から助け合って生きていきましょう、って美しく微笑みあって手を繋ぐシーンで終わるんじゃないかな 」
「なるほどな。二人の母親が俺たちを見る否や一緒に抱きついてきて、涙流して和解したりして。ドラマはいいところで終わるからな。ハッピーエンドで幸せに暮らさないとな 」
「でも、現実はまだ、これからだからな 」
私は轟の視線の先を見た。世界に一筋の光が降り注ぐ。
しかし、二人はその光の先の、見えないものを見ていた。目には見えないが、全く同じものを。
これから先、二人を待ち受ける永い永い歳月。言葉を交わし、互いに存在を認めてしまった代償に、二人の新しい関係を受け入れる時間。もはや逃げることは不可能だ。一生、断ち切ることのできないこれからの関係こそが本当の世界なのだ。
それが、決して生易しいものだけではないと、私たちは予感している。
この複雑な関係を疎ましく思ったり、憎く思い、やりきれない、一生関わりたくないと思う瞬間はきっと来るだろう。それは、なんとなくという直感を頼りに。
「楽しかったね 」
「ああ、楽しかったな 」
私達は、ずっと前を向いて歩いていた。
同じ目、同じせいせいした表情で。
私達は、もはや引き返すことの出来ない場所に向かって、歩みを進めていた。一歩一歩、歩幅を合わせて。
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正義のヒーロー赤マフラーZ(プロフ) - いちごさん» コメントありがとうございます！私もいちごさんの作品の作品を拝見させて頂いています。友達申請、させていただきますね。 (2017年8月12日 19時) (
レス) id: 90857948a4 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - こんにちは！！思春期+密室や気になるアイツはノーブラ野郎を書いている者です……！いつも愛読させていただいてます！！！！これからも更新頑張ってください！友達申請とかしてもいいですか……？？ (2017年8月12日 18時) (レス) id: a88477f61c (このIDを非表示/違反報告)
正義のヒーロー赤マフラーZ(プロフ) - あーるさん» コメントありがとうございます。物語シリーズ、一時期ハマってました(笑) (2017年8月12日 16時) (レス) id: 90857948a4 (このIDを非表示/違反報告)
あーる - 面白かったです！まさかの某迷子Pである。いつか、「かみまみた」って言ってくれるかなぁ。 (2017年8月12日 15時) (レス) id: 5ac2a3e4cf (このIDを非表示/違反報告)
正義のヒーロー赤マフラーZ(プロフ) - 麥さん» すみません！私としたことが外し忘れていましたm(_ _)mご指摘ありがとうございます！ (2017年8月12日 13時) (レス) id: 90857948a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：正義のヒーロー赤マフラーZ | 作成日時：2017年8月12日 12時
