〃 ページ12
*
空は茜色に染まりゆく。楽しいことはあっという間に過ぎ去ってしまう。
時間の感覚というのは、本当に不思議だ。
あとで振り返ると一瞬なのに、その時はこんなにも長い。アイツと一分一秒一緒にいるだけで憎しみがこみ上げてくるのに、緑谷たちとこうして歩いている時間はふと気づくと、もう終わっている。
同じ一分一秒の連続だったということが信じられない。
「あ、そういえば、お母さんの体調はどうだった？ 」
お母さん、と聞いて、自分の母親のことを指していることを理解するのに数秒かかった。
俺が体育祭以降、二週間に一度のペースで母さんの病院に通っていることを緑谷は知っている。俺の家庭の事情も。でも流石にアイツと兄妹であるとは知らないだろうけど。たまに相談もしているし、だからこうして訊ねられているのか。
「ああ。医者が言うには、大分回復しているそうだ。もうすぐ退院も夢じゃないって...... 」
どうも家族の話は苦手だ。どうしても、息詰まってしまう。
「そうなんだ！でも退院した後、轟くんが社会に出たら一人になっちゃうよね。寂しいんじゃないかな 」
「そうかもしれないな。でも、母さんは今までもずっと一人で戦ってきたから、きっと大丈夫だろ 」
いつの間にか暗くなってしまった雰囲気を誤魔化すかのように、緑谷は口を開く。
「でっ、でもさっ、逆に一人になれば、再婚とか、また幸せを掴むチャンスとかも......！ 」
「まさかな 」
思ってもみなかった言葉に、不意をつかれて笑ってしまった。
＿＿＿＿再婚。
表情に乏しい、けれども優しい母さんの顔を思い浮かべる。母さんはいつだって母さんで、それ以外の存在ではなかった。クソ親父に苦しめられ、人間不信になってしまった母さんが、もう一度別の男と結婚するなんて考えられない。
自分の中だけでそう決めつけているだけで、本当は＿＿＿＿、
どこかにひやりとした風が吹く。
ふと、あの女の顔が目に浮かぶ。
一度だけ、中学の卒業式に来ていた火神Aの母親。堂々とした顔でこちらを見つめ、落ち着き払っていたあの女。
なぜあの女は再婚しなかったのだろうか。
ウチの親父と別れても、悲嘆に暮れたとは思えない。いくらでも新たな男が現れただろうに。
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正義のヒーロー赤マフラーZ(プロフ) - いちごさん» コメントありがとうございます！私もいちごさんの作品の作品を拝見させて頂いています。友達申請、させていただきますね。 (2017年8月12日 19時) (
レス) id: 90857948a4 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - こんにちは！！思春期+密室や気になるアイツはノーブラ野郎を書いている者です……！いつも愛読させていただいてます！！！！これからも更新頑張ってください！友達申請とかしてもいいですか……？？ (2017年8月12日 18時) (レス) id: a88477f61c (このIDを非表示/違反報告)
正義のヒーロー赤マフラーZ(プロフ) - あーるさん» コメントありがとうございます。物語シリーズ、一時期ハマってました(笑) (2017年8月12日 16時) (レス) id: 90857948a4 (このIDを非表示/違反報告)
あーる - 面白かったです！まさかの某迷子Pである。いつか、「かみまみた」って言ってくれるかなぁ。 (2017年8月12日 15時) (レス) id: 5ac2a3e4cf (このIDを非表示/違反報告)
正義のヒーロー赤マフラーZ(プロフ) - 麥さん» すみません！私としたことが外し忘れていましたm(_ _)mご指摘ありがとうございます！ (2017年8月12日 13時) (レス) id: 90857948a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：正義のヒーロー赤マフラーZ | 作成日時：2017年8月12日 12時
