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グラスに残った最後の水を飲み干し喉を湿す。
ノーマンの話を聞いて、何を言えばいいかわからなかったがようやく言葉を出せるようになった。


「……じゃあ、今は、」
「レグラヴァリマの元から逃げて、ミネルヴァさんに匿ってもらったんだ。彼は弟のピーターからも逃げていたから、隠れるのは得意だったみたい」
「っ、そうだ識別番号(マイナンバー)!」


首元を隠すフードを剥ぎ取るように掴んだ。



「……薄く、なってる……?」
「そう。タトゥーじゃなくて消えにくいインクで印字されてるだけだから、今少しづつ消しているんだ」


照れたようにノーマンは言う。
まるで2年前の悲劇はただの物語だったように。
ただの1つの美談だったように。

ただの──────────



「……っ、」
「……え」
「なによ……それ、っ!」



意志と関係なく涙が落ちていく。
ノーマンは驚いたままアワアワとしていた。マスカラが落ちるのもどうでもいい。ドレスが濡れるのもどうでもいい。



「私のこの2年はなんだったのよ!!!」



悩みに悩んだ2年間。
ノーマンに好きと言いたくて、そばにいたくて、堪らなく苦しかったのに。
いざ会えた当の本人は全然違う。



「A、」
「私は……っ、貴方がレグラヴァリマにどれだけ酷いことされてるのか、どれだけ苦しんでいるか、ずっと考えてた!
もしあの時"好き"と言い返せたら?
もしあの時屋敷から飛び出して2人でどこかへ逃げていたら??
なのに……なのに何よそれ!」


これだけ1人の男に執着していた自分がバカみたいだ。

私が悩み苦しんでいる間にこの男は飄々と自分を高めていただけだというのに。さっさとレグラヴァリマの元から逃げていたと言うのに。

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響宇(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。夢小説を読みながら涙を流したのはこの作品が初めてでした…!とても楽しく拝見させて頂きました。これからも何度も読み返し愛読させていただこうと思います、ありがとうございました!! (2021年8月28日 3時) (レス) id: 56959af681 (このIDを非表示/違反報告)
ラムダ(プロフ) - こんなにドキドキハラハラしながら読んだ作品はこの『Lady』が初めてです!とっても好きになりました!!!好きになりすぎて3回も読んでしまいました^_^これから応援しています!! (2021年3月30日 1時) (レス) id: 963810d561 (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - いろはさん» コメントありがとうございます!楽しく読んでいただけたようでとても嬉しいです。所々に伏線を隠しているのでぜひ色々見つけてみてくださいね。これからも応援よろしくお願いします! (2021年2月9日 8時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - 羽鶴さん» コメントありがとうございます! 私の作品の数々を読んでいただき嬉しいです。『Lady』含め作品たちへの応援ありがとうございます!ぜひまた遊びに来てくださいね (2021年2月9日 8時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
いろは(プロフ) - 今まで見た約ネバの現パロ小説の中で1番好きで、気に入りました!!(上から目線ですみません)そして、物語の伏線など、凄いと思いました!これからも応援しています!! (2021年2月7日 19時) (レス) id: 9650a3da61 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:MiUmIu | 作成日時:2020年10月10日 8時

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