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「A、はい」
「……ありがとう」
ノーマンから水の入ったグラスを受け取る。
室内から再びバルコニーに戻ってきたノーマンは被り直していたフードを取った。
「どうして顔を隠すようにフードを被ってるのよ」
「それは後で話す。
それよりお水飲みなよ。酔いが回ってるんでしょ」
「……よくわかってるわね」
グラスに口付けるとズレ落ちたストールをノーマンがかけ直した。
見上げればノーマンはふわりと微笑む。待ち望んでいた光景なのに、何故か恥ずかしくて顔を逸らした。
「照れてるの?」
「う、うるさいわね」
「可愛いよ、そんな表情も」
「は、はぁ?! な、何言ってんのよ!」
「君に会いたかった、ずっと」
白いマントが風に吹かれていく。
2年前の別れからずっと、ノーマンも私と同じことを思ってくれていたことが素直に嬉しかった。
「君を思い出さなかった日はなかった。レグラヴァリマにどれだけ遣われようと、惨めな目にあったとしても、Aとの日々を糧になんとか頑張ってこれたんだ」
ノーマンがそっと私の手を取る。
少し冷たい彼の手は冷えきった私の手に温もりを取り戻していく。
「少し長くなるけど、僕がまたここに来られるようになったのは沢山のことがあったからなんだ」
「たくさんの、事?」
「レグラヴァリマとの事もそうだけど……もっと大事なこと──────────
旦那様との、約束」
「2年間の話、聞いてくれる?」
ノーマンの問いかけに、私は静かに頷いた。
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響宇(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。夢小説を読みながら涙を流したのはこの作品が初めてでした…!とても楽しく拝見させて頂きました。これからも何度も読み返し愛読させていただこうと思います、ありがとうございました!! (2021年8月28日 3時) (レス) id: 56959af681 (このIDを非表示/違反報告)
ラムダ(プロフ) - こんなにドキドキハラハラしながら読んだ作品はこの『Lady』が初めてです!とっても好きになりました!!!好きになりすぎて3回も読んでしまいました^_^これから応援しています!! (2021年3月30日 1時) (レス) id: 963810d561 (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - いろはさん» コメントありがとうございます!楽しく読んでいただけたようでとても嬉しいです。所々に伏線を隠しているのでぜひ色々見つけてみてくださいね。これからも応援よろしくお願いします! (2021年2月9日 8時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - 羽鶴さん» コメントありがとうございます! 私の作品の数々を読んでいただき嬉しいです。『Lady』含め作品たちへの応援ありがとうございます!ぜひまた遊びに来てくださいね (2021年2月9日 8時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
いろは(プロフ) - 今まで見た約ネバの現パロ小説の中で1番好きで、気に入りました!!(上から目線ですみません)そして、物語の伏線など、凄いと思いました!これからも応援しています!! (2021年2月7日 19時) (レス) id: 9650a3da61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:MiUmIu | 作成日時:2020年10月10日 8時