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『貴女に神の御加護がありますように』
「……っ、もぉーーっ……」
バルコニーの柵に思わず突っ伏した。
月は煌々と赤いドレスを照らし、夜風は肌を撫でていく。
冷たい風に小さく身震いした。
「さむ……」
そろそろ戻ろうか、と顔を上げた時────────
背後に誰かの気配を感じた。
2年前のムジカの生誕祭の時のような、不穏な気配ではない。
どこか優しく、どこか懐かしい気配。
パタン、と静かにバルコニーと中を繋ぐガラス戸が閉じられ、今この空間には私と一つの気配の二人きりだ。
まだ、振り向けない。
上質そうな革靴の音が少しずつ近付いてくる。
パパのではない。ドンでもない。
さっきのレウウィスか? いや違う。彼の気配でもない。
思わずバルコニーの柵を強く握った。
「─────今宵は冷えますよ、レディー」
その言葉と共にふわりと肩を包む暖かなストール。
『男』は一歩後ろに立ち、丁寧にストールをかけていく。その男の手が肌に触れる度、心臓が高鳴っていくのを感じていた。
彼の手が離れてしまう。
名残惜しそうに、ゆっくりと。
あぁ、待って行かないで。
もう少しだけ、そのまま────────
「─────触れて、っ」
言い終わるのを待たずに彼は私を抱き締めた。
真紅のドレスごとこの私を。強く強く抱き締めていく。折角のストールがするりと落ちた。
背中から伝わる温もり。自分を抱き締める腕の強さと優しさ。手を震わせながら男の腕にそっと触れていく。
もう少しも寒くなんてない。
男の吐息が耳に触れる。
それさえも愛おしくて、愛おしくて。
「……ずっと、こうしてたかったのよ、っ」
「……はい」
「ずっと、想ってた……ずっと、」
「……うん」
.
「貴方が好きよ
──────ノーマン、あなたが、っ」
男の顔にかかったフードを夜風が奪い去った。
顕になった銀白髪─────ノーマンは、
より一層強く、そして優しく、私を包み込んだ。
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響宇(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。夢小説を読みながら涙を流したのはこの作品が初めてでした…!とても楽しく拝見させて頂きました。これからも何度も読み返し愛読させていただこうと思います、ありがとうございました!! (2021年8月28日 3時) (レス) id: 56959af681 (このIDを非表示/違反報告)
ラムダ(プロフ) - こんなにドキドキハラハラしながら読んだ作品はこの『Lady』が初めてです!とっても好きになりました!!!好きになりすぎて3回も読んでしまいました^_^これから応援しています!! (2021年3月30日 1時) (レス) id: 963810d561 (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - いろはさん» コメントありがとうございます!楽しく読んでいただけたようでとても嬉しいです。所々に伏線を隠しているのでぜひ色々見つけてみてくださいね。これからも応援よろしくお願いします! (2021年2月9日 8時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - 羽鶴さん» コメントありがとうございます! 私の作品の数々を読んでいただき嬉しいです。『Lady』含め作品たちへの応援ありがとうございます!ぜひまた遊びに来てくださいね (2021年2月9日 8時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
いろは(プロフ) - 今まで見た約ネバの現パロ小説の中で1番好きで、気に入りました!!(上から目線ですみません)そして、物語の伏線など、凄いと思いました!これからも応援しています!! (2021年2月7日 19時) (レス) id: 9650a3da61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:MiUmIu | 作成日時:2020年10月10日 8時