Lady III 【約束のネバーランド】

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『え？生クリームが欲しい？
……わかりましたよ。明日は用意しますから。今日はこれで我慢してください』


サラダにはドレッシングをかけていただく。
さっぱりとしたイタリアンドレッシングが新鮮な野菜と絡まりより風味を引き立ててくれる。

前執事長お手製のドレッシングを。



『あのドレッシングは嫌いって言うので。
昨日は徹夜でドレッシングについて研究したんですよ。これなら食べられるでしょう？』



「……そろそろ無くなるわよ。早く次のを準備しなさいよ」



フォークを握る手を止めることなくAは次々と朝食を口に入れていく。









泣くな。
また涙が溢れそうだ。それでも泣くな。



私がここで泣いてどうなる。もう昨日のうちに後悔は全て流しきったのだから。


朝食にでさえノーマンの面影が残っている。
なんなのよアイツ。どこまでも私の生活に関わって。今思えば甘やかしすぎなのよ。





『……将来の夢？』
『そうよ。ノーマン、もしかしたらいつかここを出ていくかもしれないじゃない』
『そんな急に言われてもなぁ……』
『早く考えなさい！』
『うわわっ、わかったから揺らさないで、っ』


急に思い出した過去の光景。
7歳のときだったか。かくれんぼ中、2人で、ダイニングテーブルの下でスミーから隠れながら交わした会話。


『夢、かぁ……。
うーん、Aが元気でいてくれればそれでいいかな』
『はぁ？ なんで私なのよ』
『Aが元気なら僕も嬉しいし。Aにはずっと笑顔でいてほしいな』
『……なら、ずっとウチにいるつもり？』
『そうかもね』
『ふぅん……変な子ね、ノーマンって』
『はは……』
『だったら私と一緒にゲームしましょ』
『ゲーム？』
『ノーマンがずっと私のそばにいて、私を幸せにしてくれたら貴方の勝ち。私から離れて私を不幸にしたら私の勝ち。
負けた方は勝った方の言うことを聞く！ どう？』
『何そのゲーム……どっちにしろ君の勝ちじゃないか』
『それぐらい頑張りなさいよ。最近スミーから接客用語習ってるんでしょ？ 頑張れば執事長にでもなんでもなれるじゃない。

その時は私の専属執事にしてあげるわ』








「……ノーマンは、覚えていたのかしら」


すっかり忘れていたこのゲーム。
あれからノーマンは努力して私の執事になった。いや、“なってくれた”。

私を幸せにするために。
ただ、それだけのために。



ほんと、馬鹿な子。

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