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「……だから、A。君は後悔するべきではなかった。ノーマンから逃げるべきではなかった。
ただでさえ当時の僕より若い。守ってくれる人もいる。国も世界も変わった。身分の違いへの差別意識は綺麗に無くならないものの……愛のために生きて何が悪いのかね」
“愛に生きて”。ママはどうだったのだろう。ママはパパの愛を受けて幸せだったのだろうか。
ううん、疑う余地なんてない。
きっと幸せだった。
愛し愛され、私を生んで。
亡くなってからもなお、パパにこうして愛され続けている。
写真の中のママの微笑みは本物だった。
「……っ、ノーマン……っ!」
ノーマンに会いたい。今度は逃げたくない。
ノーマンを愛したい。
ノーマンに愛されたい。
何があろうとノーマンを守りたい。私が言わずとも、きっとノーマンも私を守ってくれるから。
そうやって生きて、何が悪いの。
「……気付くのが遅すぎた、君も僕も……彼女も。
ノーマンは行ってしまったよ。君を愛しながら、Aを想いながら」
全ての仕事を済ませ、ノーマンはあの金バッジを外した。もうここには戻ってこない。
これからレグラヴァリマの掌の中。どれだけ願っても、もう私の隣にはいてくれない。
「あ、ぅ、っ……あぁ〜〜〜っ!!」
パパもギルダもいることを忘れ、泣き叫んだ。
ギルダのすすり泣く声が聞こえる。これ以上ギルダに心配をかけてはいけないのに。
「……今は泣くといい。苦しむといい。
その後に、これからどうするのか……考えるのならば」
私の頭を優しく撫で、パパはギルダを連れて部屋を後にした。
『お嬢様、朝ですよ』
『A、時間』
『今日はスコーンを焼いたんだ。おやつにどうぞ』
ノーマンの声が聞こえる、気がした。
もうそんなことは叶いやしないのに。
貴方はもう私の隣にいないのに。
さよなら、私が愛した人。
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響宇(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。夢小説を読みながら涙を流したのはこの作品が初めてでした…!とても楽しく拝見させて頂きました。これからも何度も読み返し愛読させていただこうと思います、ありがとうございました!! (2021年8月28日 3時) (レス) id: 56959af681 (このIDを非表示/違反報告)
ラムダ(プロフ) - こんなにドキドキハラハラしながら読んだ作品はこの『Lady』が初めてです!とっても好きになりました!!!好きになりすぎて3回も読んでしまいました^_^これから応援しています!! (2021年3月30日 1時) (レス) id: 963810d561 (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - いろはさん» コメントありがとうございます!楽しく読んでいただけたようでとても嬉しいです。所々に伏線を隠しているのでぜひ色々見つけてみてくださいね。これからも応援よろしくお願いします! (2021年2月9日 8時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - 羽鶴さん» コメントありがとうございます! 私の作品の数々を読んでいただき嬉しいです。『Lady』含め作品たちへの応援ありがとうございます!ぜひまた遊びに来てくださいね (2021年2月9日 8時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
いろは(プロフ) - 今まで見た約ネバの現パロ小説の中で1番好きで、気に入りました!!(上から目線ですみません)そして、物語の伏線など、凄いと思いました!これからも応援しています!! (2021年2月7日 19時) (レス) id: 9650a3da61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:MiUmIu | 作成日時:2020年10月10日 8時