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「お前は臆病なくせに強がりだ。Aだけじゃなくて俺にもエマにも、弱い所を見せまいと下手くそな笑顔を貼り付けてやがる。バレッバレな薄気味悪い顔をな」
「……言うね」
「そしてAも少し似ていて違う。アイツは我慢屋だ。言いたいこと、やりたいことは沢山あるくせに言わない。やらない。それか人の為だと思っているから」
「……間違ってはいないよ」
「そんな2人が一緒にいることになったら?
何も見せようとしない頑固野郎と、本音を言えない自己犠牲女。
あーあ残念。先に潰れたのはAの方だったな」




瞬間、立ち上がってレイの胸倉を掴んでいた。そのまま振り下ろしそうになる腕を必死に抑え、自分なりの精一杯でレイを睨みつけた。レイは涼しい顔をして怒りに満ちているであろう僕の顔を見上げている。




レイの言っていることは間違っていない。
その通りだ。僕は臆病で、Aに弱味を掴ませまいと必死だった。心配させないように、僕を頼ってくれるように。

Aは、そんな僕に気が付いていたんだ。
気がついていて、言えなかった。言えば僕が尚更隠そうとすることを勘づいていたんだろう。でも言わなくても僕が苦しむ、とAはずっと葛藤していたんだろうか。






「……落ち着けよ。周りの視線が痛てぇ」

ゆっくりと腕の力を抜いて椅子に座り込んだ。
レイはシワになったジャケットを軽く直しながら口を開いた。


「ま、それによくAは気にしてたしな。家柄とか能力とかどうのこうの、って。俺は何度くだらねぇって言ったよ」
「……」
「まぁ、あの性格じゃ気にするのも仕方ねぇけどさ。
だからな、俺は毎回アイツに言ってやったんだよ、相談受ける度に」
「え、」


レイが胸倉を掴む僕の腕を掴み返した。
運動部へ駆り出されていた経験を幾つも持つだけあって、僕よりも力が強い。






「『それでもノーマンが好きだろ?』って。
お前はどうなんだ、ノーマン!」


あっという間に腕をとられると今度はレイが僕の胸倉に掴みかかった。
揺れたテーブルの、真っ黒なコーヒーが揺れる。甘ったるそうなコーヒーが。






決まっているじゃないか。
僕はAが好きなんだ。全部、Aが。

兄さんから逃げてきた僕を、突然現れた僕を最初に受けいれてくれたのがAだった。
たまたま席が近かったから、かもしれない。

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MiUmIu(プロフ) - ちょこばななさん» コメントありがとうございます!別の作品でのコメントも拝見しましたがサマーウォーズの私の作品も好きだいらっしゃるとか!?本当にありがとうございます!これからもよろしくお願いします (2020年10月15日 9時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
ちょこばなな(プロフ) - MiUmIuさん» おもしろかったです!最高です…!さすがとしか言いようがないです笑 (2020年10月14日 21時) (レス) id: 25d5b056bf (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわ(プロフ) - これからも頑張ってください (2020年6月13日 9時) (レス) id: 25ce3e61b4 (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - ふわふわさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです! (2020年6月12日 18時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわ(プロフ) - すごい面白かったです (2020年6月12日 15時) (レス) id: 25ce3e61b4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:MiUmIu | 作成日時:2020年6月5日 13時

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