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「僕に、追いつけない? 僕が、素敵?
何それ。勝手なこと言わないでよ」
ワイシャツの袖で目を抑えてノーマンは言う。その白いシャツには大きなシミができた。
「Aが追いつく必要なんてない。そもそも僕はそんな先を行くつもりもない。Aの隣にいたいんだ。
そのためならラートリーの肩書きなんていらない」
ノーマンはキッパリと言い張った。
私の為に、生まれ育った家まで捨てると言ってくれる。私はそれほど愛されてる。
隣にいてくれ、と願われている。
雑に涙を拭うノーマンの腕をそっと掴んだ。
「……A」
「ダメだよ、そんなに擦ったら……腫れちゃうよ」
「……それはAだろ」
「うん……そうだね」
ノーマンの目尻に残った水滴を親指で拭った。するとノーマンも私の涙も優しく拭いてくれる。
「……そばにいてよ」
か細い声でノーマンは言った。
「Aがいてくれるだけでいいんだ。それだけで僕は、煩い兄さんにも耐えられる。仕事だってなんとかなる。
でもAがそのせいで我慢するなら、僕は両方とも捨てる」
「……ダメだよ。そんな簡単に捨てちゃ」
「Aを捨てるよりは全然いいよ……そばにいて。お願い。早く帰ってこいって言うなら早く帰る。兄さんを黙らせろって言うなら黙らせる。
好きだよ。Aが好き。
もう僕は君なしじゃいられないよ……」
ノーマンが私の肩に顔を埋めた。ふわふわな銀白髪が首にかかってくすぐったい。
ノーマンは甘えたい時、こうやって私を抱きしめるんだよね。
戻りたい。
ノーマンのそばにいたい。
ノーマンと一緒にいたいよ。
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MiUmIu(プロフ) - ちょこばななさん» コメントありがとうございます!別の作品でのコメントも拝見しましたがサマーウォーズの私の作品も好きだいらっしゃるとか!?本当にありがとうございます!これからもよろしくお願いします (2020年10月15日 9時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
ちょこばなな(プロフ) - MiUmIuさん» おもしろかったです!最高です…!さすがとしか言いようがないです笑 (2020年10月14日 21時) (レス) id: 25d5b056bf (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわ(プロフ) - これからも頑張ってください (2020年6月13日 9時) (レス) id: 25ce3e61b4 (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - ふわふわさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです! (2020年6月12日 18時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわ(プロフ) - すごい面白かったです (2020年6月12日 15時) (レス) id: 25ce3e61b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:MiUmIu | 作成日時:2020年6月5日 13時