感じたのは、絶望か、無か ページ12
＊
ピッ、ピッ、ピッ。
無機質な電子音が真っ白な部屋に鳴り響いていた。
ガラスに囲まれた白い部屋と、それを囲う大勢の研究員達。
ここから先は、知る人ぞ知る時間だ。
『これよりNo.ajm352の最終研究を始める』
感情のない、冷たい声。
その声を聞いた研究員達はガラスの壁ギリギリまで歩み寄る。
その壁の向こうには、1人の被検体と自我を失っている鬼が閉じ込められている。
被検体は座り込んだまま、恐怖に怯えて動けずにいた。
「今朝のバイタルチェックに異常はなし」
「投与した薬のナンバーは001から015まで。その際の拒絶反応なし」
「鬼についてはα注射により精神を崩壊させています」
研究員は口々に自分の成果を言い出す。
それを端的にメモする12歳の研究員はガラスの向こうへ目を向けた。
腹を空かせた鬼は、『エサ』を目の前にして興奮を隠しきれていない様子。
目をかっと見開き、大きな口からはヨダレがボタボタと零れ落ちていた。
鬼が走り出す。エサに向かって、一直線に。
被検体は拒むように手を振るも、
その手はあっという間に鬼に掴まれ、
逃げようとする足を握られ、
暴れる体を押さえつけられ、
絶叫ごと、鬼の口へ放り込まれていった。
.
何回か咀嚼をした鬼は、入ってきたゲートから出ていき、部屋は何事も無かったかのように静まり返った。
ただ一つ、小さな血痕を残して。
「チッ、薬の効果はなしか」
「あれじゃあ弱いんだよ。もっと打っときゃよかったのに」
「それだけじゃダメよ。もっと効能の強くて即効性のあるやつにしなきゃ」
「食事から混ぜとくっていうのはどうだ？」
あれだけガラスに詰め寄っていた研究員は、もう用済みだというようにサッサと歩き出した。
1人の少女だけが、そこに座り込んでいた。
少女はずっと、あの赤い模様を見つめたままバインダーを強く抱きしめていた。
『......A』
最初の声に、少女はハッとする。
『今日の実験は終わり。結果は見ての通り。
これを参考に、明日からお願いね』
“22194には期待しているのだから”。
そう言い残し、その声は聞こえなくなった。
少女は立ち上がり、赤い模様を一瞥した後、大人達のように歩き出す。
歩きながら、1番上のレポートに『 』と書き殴った。
それを知る者は、彼女以外にいなかった。
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MiUmIu(プロフ) - みしょやす。さん» コメントありがとうございます！『皆様が驚くようなラストを』と思っていたので、そう思えて頂けて光栄です！もし次作が出来上がりましたら、そちらもよろしくお願いします！ご愛読ありがとうございました！ (2019年6月29日 13時) (
レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
みしょやす。(プロフ) - はじめまして！ 完結おめでとうございます、最後はああやって終わるのか…と朝から衝撃にあいました笑笑 毎回毎回楽しみにしていたのでそれが終わっちゃったのは寂しいですが、ズルズルやることなくスパッとしていていいなとも思いました！（何様だ）本当にお疲れ様です (2019年6月29日 8時) (レス) id: 5dafdcb4c2 (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - uaさん» コメントありがとうございます！ワンダーランドから読まれているのですね！？本当にありがとうございます！！すごく嬉しいです！次回作もぜひよろしくお願いします！ (2019年6月28日 22時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
ua(プロフ) - 完結おめでとうございます！そしてお疲れます！ワンダーランドからMiUmIuさんの作品を読ませていただきだいてます。主人公の設定とかストーリーが好きすぎてどうしようもないです笑新作が出来たらまた読ませていただきます！本当にお疲れ様でした！ (2019年6月28日 20時) (レス) id: bfc46cf277 (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - rin:)さん» わぁー！コメントありがとうございます！有難いお言葉.......光栄です！！ (2019年6月24日 19時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：MiUmIu | 作成日時：2019年6月7日 6時
