ワンダーランドII【約束のネバーランド】

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少女がゆっくりと体を起こそうとする。
ニックと同じジャケットには血が着いていた。


顔が上がっていく。









土埃で汚れた金色の髪









小さく震える青い瞳









白い肌に付着している真っ赤な血









紛れもない
5年前に別れを告げた









「A......っ！？」



大人びたAの姿だった。






再会出来る日をどれだけ夢見たことか。
ラムダにいた頃も、Aのことを想わなかった日はなかった。



今すぐにでも会いに行きたい。
今すぐにでも抱きしめたい。









固く閉じられたこの扉が無ければ。







「起きろクソガキ」


パパはAの胸ぐらを掴む。
Aの息は苦しそうで、持ち上げられたことで腕や顔の傷が生々しく見えた。






「仲間が鬼に食われそうだから？
だから助けたって言うのか！？鬼を殺さずに仲間を先に！？このクソ野郎が！！
弱者は捨てろと何度言えばわかるんだ！ ああ！？」



今度はテーブルの上に叩きつけられた。



ニックが置いたコップが落ち、割れた。

それと同時に、僕の頭の中の何かも切れた。



ドアノブに手を伸ばし、無理矢理にでもこじ開けようとした。





なんだあの有様は......！！
これ以上Aを傷付けるな！！








その傷は、どうしたの？

それは、戦場で付けられたの？

鬼との戦いで付けられたの？

それとも、このパパの暴力で？




そんな痛い思い、ずっとしてきたの？






今、助けるから。
今度こそ、守るから......っ！！





ミシミシと音を立てて鍵が外れかかっていく。








「......ん？」


パパの意識がこっちを向いた。









その時、ニックがこの扉を思い切り殴りつけた。

鼓膜が破れそうなほどの大きな音で。






「なんだニック、反抗期か？」
「......いえ、別に......ぐっ！！」



パパの2度目の拳が突き刺さるようにニックに入る。
痛みに悶え、ニックは倒れた。









ニックのアレは、僕らへの牽制だ。

『余計なことはするな』.....そう言いたいのか？








「ふん......大方、お前もこの女のことを救いたいみたいだな。

残念だが、今日の『お仕置き』はもう決まっている」






Aの金髪をパパは無造作に掴む。

ニックの腹を踏み付け、パパは2階へ上がっていく。





「A、今日も楽しい時間だな」






後を片しておけ、と言い残し、パパはA
を引きずって2階の部屋の扉を閉めた。

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