ワンダーランドII【約束のネバーランド】

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重い空気がこの空間を流れていく。

誰も、あのエマでさえも何も言えなかった。



ニックの言うパパの存在がどれほどの脅威なのか、僕らには見当がつかない。







────大きな音と共に玄関の扉が開いた。

飛び込んできた子供が間髪入れずに叫ぶ。





「パパが帰ってきた！！」


「っ、何！？」




ニックがテーブルに乗せていた足を下ろすと同時に子供たちが慌て出した。



「帰るのは明日の夜だったはずだろ！」
「門兵が緊急信号出したから見たら向かってきてたんだよ！」









「〜っ、クソっ！ お前らこっちに来い！」



僕らを無理矢理立たせ、突き当たりの部屋へと押し込んだ。
奥には缶詰のようなものが見えるから、倉庫らしい。




「いいか、これから何が起きても絶対に物音を立てるな！
息をするのにも最大の注意を払え。いいな！？」


それだけ言い放つとニックは扉を閉めて鍵をかけた。



「なんだ、アイツ......」
「急に慌てだしたと思ったらこんな所に......」



レイとドンが構わずに口を開いた。
ギルダもなにか言おうとした、その時だった。








扉の外で大きな物音が響いた。



何が起きたのかと、扉の小窓から外の部屋を覗く。









「────よう、俺の可愛い子供たち。
元気にしてたか、ん？」


大柄な男が1人の女の子を肩に抱えて玄関から入ってきた。

先程の音は扉が蹴飛ばされた音らしい。
男の後ろにもニックのとは違う、新しい子供たちが何人か続いていた。
傷だらけの小さな子供たちが。


あの時間で、ハウスの子供たちは一斉に壁際に姿勢よく並んでおり、口は真一文字に固く閉じられている。
ニックはこの部屋の扉のすぐ横で構えていた。





あの男が、『パパ』......。



パパらしきその男はつかつかと2列に別れて並ぶ子供たちの間を通り、ニックの目の前まで近づいた。





「ニック」

「......はい」



前触れもなく、男はニックの腹に拳をぶちこんだ。

ニックから短く悲鳴が吹き出した。




驚いたエマが扉を開けようとする。
それをレイが止めた。




「てめぇ、まともに教育も出来ねぇのか、あぁ！？」

「ごほっ......なんの、ことですか......」

「こいつの事だよ、コイツ！」





パパが肩の少女を投げ飛ばした。
少女の体は長テーブルに打ち付けられ、咳込んだ。

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