ワンダーランドII【約束のネバーランド】

16 ページ16

＊＊






「まって、じゃあ約束は？」

ニックに問う。
僕らが果たした約束をどうして知らないのか確かめる必要がある。



「僕らはラートリー家を潰して、そこを始めとした大人達にも知らせたはずだよ」

「さっきも言ったが知らねぇよ。
......『パパ』がそれを隠していたのならな」



「その、『パパ』ってなんなの？」



ニックの顔が曇った。言いたくないのか、しばらく口を閉じた。




「俺達の、この駐屯所のトップだ。
農園でいうママみたいなもんだな」

「どうして、パパは約束のことを隠していたの、かな......？」

「知らねぇよ」




......なんだか、違和感がある。

案外、ニックは知らないことが多い。




「そもそも、どうして君達は鬼を殺すの？」
「知らねぇよ。そう命令されてるからだ」



「どうしてあの鬼は僕らを襲う？
約束では襲わないはずだ」
「知らねぇよ。あちらさんも知らねぇんじゃねぇの」



「あの森はなんだ？生態系が滅茶苦茶じゃないか」
「そんなモンあの森の虫にでも聞けよ」






だんだんイライラしてきたのかニックはため息をついた。



そしてあの目で睨む。
冷たく、怒りが満ちた目で。




「俺達は何も知らねぇのさ。
どうして鬼を殺す？どうしてあの森が存在する？



どうして、俺達は存在している？」




さっきまであれほど騒いでいた子供たちの声が止んだ。
いくつもの目がこっちに注がれている。
エマが唾を飲み込む音が響いた。





「不思議が耐えない、疑問が消えない。



だからここ、『不思議な世界(ワンダーランド)』は終わらない」



ニックの顔には、何か不気味な笑みが浮かんでいた。



全てを諦めてしまったかのような、そんな笑みが......。

17→←15

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す