君のそばで眠りたい (ページ7)

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「ただいま～」

「ねぇもっと変装してきてよ
　いくら病院でも怪しいって」

「ごめぇん…」

小一時間、お昼や夜に時間ができたら
Aの病室で簡単なご飯を食べる

一人にしては広すぎる病室

大きなベッド

　

　

…最後に隣で寝たのは、いつやったやろ

　

「お箸は？ある？」

「あ、うん、ありがと～」

Aは本当に病人なのか
疑いたくなるくらい、何も変わっていない

病気の宣告をされたときでさえ、
彼女は顔色一つ変えなかった

「午後は？なんのお仕事？」

Aのベッドのすぐ横には、小さな花束があった

「午後は雑誌の取材と、音楽番組のリハ！
　このお花きれいやね」

「さっきいただいたの、となりの部屋のおばあちゃんに」

「あ、そうなんや」

「うん、きっと私のこと聞いて
　自分宛ての花束からこの２本、抜いてくれたんだと思う」

　
Aが入院し始めたのは、５日前
始めは断られたけど、僕が来たいからという理由で

完全個室の病院にしてもらった

　

Aは、きれいだよね、って言いながら
ガーベラの花びらをなでるように触った

「オレンジや…」

「うん、だから嬉しかった
　隆平がいるような気がして」

「…A、」

「なーんてね(笑)オレンジガーベラ、
　普通にかわいくてさ」

　

冗談に決まってるじゃん、とでも言いそうな
彼女の顔は、血の気はあるし、
本当に元気そうだった

笑うと目が細くなるところも、
それが自分では好きじゃないと言っているところも

彼女の笑顔を見るたびに思い出す

　

隣に座ってコンビニ弁当を開けると

「あ～さっきご飯食べたのにまたお腹すいた」

と、口をとがらせて僕を見てきた

それくらいが、安心する

いつもの川口Aだなって