君のそばで眠りたい (ページ16)

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＊

　

病院の方が楽だったかなぁと
彼女は困ったように笑う

ベッドに寝かせるときに
抱っこしても、

体の軽さ一つで、心が踏みつぶされる気持ちになる

　

「ねぇ、隆平」

　

　

もう、呼吸器もなにもかも彼女は拒否した

　

「…なに」

　

　

情けないくらい、泣いている僕を

さすがにAは笑い飛ばすことはしなかった

　

「実はね、私ね、
　隆平のこと、大好きなんだよ」

　

　

知ってた？とニコニコしながら聞く、Aの手を

彼女の体温を感じられるくらい、強く、強く、

　

「…もちろん」

　

　

そっかぁ、

満足そうな顔で微笑んだ彼女の手は、

　

僕の涙をぬぐう

　

「私のこと、すき？」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

　

　

　

　

その手は、

　

半年記念日にプレゼントしたリングをつけた
彼女の左手は、

　

今度は優しく僕の頭をなでた

　

　

パーマの髪の毛、好きだよって

昔言ってくれたのを、今になって思い出した

　

「…」ｷﾞｭｯ

　

　

　

「ねぇ、今日だけ、」

　

　

今日くらいさぁ、久しぶりに、

　

　

　

少しだけ悔しそうに、

そして恥ずかしそうに提案してきた

　

今思えば、彼女の最初で最後の

恋人らしいお願いだったかもしれない

　

　

初めて、Aが泣いているのを見た

　

　

　

　

君のそばで眠りたい

　

　

　

彼女は、確かにそうつぶやいた

　

僕はうなずく

　

できるだけ、大きく

できるだけ、笑顔で

　

　

Aは嬉しそうな顔をして

静かに目を閉じた

　