アネモネ

君だけを ページ16

*










そして火曜日


ラストで指名してくれたお客さん


　







「安田です、よろしくお願いします♪」



「お願いします」ﾆｺｯ


　

「今日はどんな感じで？」

　



「あの…私に似合いそうな、安田さんの好みで」


　


「爪は長さ出します？地爪でいきます？」


　


「地爪でお願いします」


　


「ご予算とかは…」

　








僕の好みで、なんてオーダーは初めてやった

　












昔はとにかく柄をたくさん書けるのが


器用な証



デザインのセンスがある証やと


勝手に思ってた



　




だけど


Aのことを見たり考えたりしていると






シンプルの魅力もわかる


　



彼女は、美容に興味がないと言ってたのがわかるくらい




化粧も薄い、


服装もラフ


　





ネイリストは


どうしてもお客さんの手元を見ないといけないから



　



今担当しているお客さんみたいに


ネイルされている爪を見ることが普通


　





だけど



Aは違った



　





「…よし、完成です

　どうですか？気に入っていただけました？」


　


「はい、とても…シンプルなのに華になりますね」


　






紺色ベースでフレンチ、


両手1本ずつに小さ目のストーン


別の1本ずつのフレンチの部分をレース模様



　



クールな色の中に


レース柄で女の子っぽさを出す

　




そういうギャップのある子やから、Aは


　




…俺なんでお客さんやなくて


Aのこと考えてんねん



　

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