花瓶の底の水を吸う 3/yzr ページ22
曲を決めることになり、必然的に彼女と話さなければいけなくなる。彼女とこんなに至近距離で話すのは初めてのことで、どこまで近づいていいのか不安だ。きっと抑制剤を飲んでくれているので襲うことはないだろうけど、近づきすぎたら彼女に怖がられる。
「は、羽生さん…気づかれてたとは思うんですか、私、今まであなたのこと避けてました…けど、こうやってペア組むことになったんですからこれからは避けません!改めて、よろしくお願いします!」
彼女からこんなこと言われるとは思っていなくて、驚きで目を丸くする。その顔を面白いと思ったのか彼女はクスリと笑った。初めて見せてくれた本当の笑顔に、心がほのかに温まり微笑みが浮かぶ。
「避けるのも仕方ないよ。こちらこそ、よろしくね」
「はいっ!」
俺たちは最初の気まずさなんてなかったかのように、一緒にアイスダンスの振り付けを考えるのを楽しんだ。話してみるとやっぱりいい子だし、なにより話していて楽しい。たまにふざけあったりしていて、気づくと他の人達は決め終わったのかもう滑っていた。
それを見て俺たちは顔を見合わせ、真面目に振り付けを考え始めた。
みんなより少し遅れてしまったため俺たちは残って練習することにした。曲をかけて、先程決めた振り付けに合わせて滑っていく。彼女と滑るのは初めてなのに、今までもこうやって滑ったことがあると思えるくらい彼女とは相性が良かった。
「そろそろ休憩にしませんか?」
「ん、そだね」
リンクの外に出て、一休み。
「結構いい感じに仕上がってきてるし、一位間違いなしですね」
「だねぇ。こんなに息ピッタリだとは思わなかったからびっくりだよ」
「羽生さんのおかげですよ!すっごく合わせやすいです!」
「いやいや、Aちゃんの才能だよ」
なんて話していると、突然彼女はへたへたとその場に座り込んだ。どうしたのだろう、と心配になった時、強く自分を誘惑するような甘い匂いがした。
「っ、抑制剤…きゃっ!」
彼女が自分の鞄を取ろうと伸ばした手をぐっと掴む。そして、自分の方へと引き寄せて強く抱き締めた。
何をしているのか自分でも分からない。けど、この甘い匂いが自分を惑わせるんだ。
「やば、い…俺、今から最低なことする、かもしれない…」
「や、やだっ、はなし、てっ!」
必死に俺から逃れようとする彼女の後頭部をがっしりと掴み、キスをする。
チョーカーについている錠前が、キラリと妖しく光る。
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kokona(プロフ) - オメガバースの話、続きが凄く気になります…! (2019年4月1日 8時) (レス) id: 498a098029 (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - ?まなかさん» オメガバース凄く好きなんです...!いつもコメントありがとうございます!すっごくモチベーションに繋がるし、嬉しいです! (2018年4月6日 22時) (レス) id: e662d7ec1b (このIDを非表示/違反報告)
?まなか(プロフ) - お、オメガバースイイですねぇ。うへへ。素晴らしいです。作者様好き!! (2018年4月6日 17時) (レス) id: dbf487caee (このIDを非表示/違反報告)
天音みく(プロフ) - ?まなかさん» はい!エイプリルフールのおふざけ話でした!驚いてもらえて嬉しいです笑 (2018年4月1日 14時) (レス) id: e662d7ec1b (このIDを非表示/違反報告)
天音みく(プロフ) - シーカさん» 読んでいただきありがとうございます!おふざけで書いた文章なのでそう言ってもらえると嬉しいです笑これからもどんどん更新するのでよろしくお願いします〜! (2018年4月1日 13時) (レス) id: e662d7ec1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みく | 作成日時:2018年3月26日 10時