【銀盤】恋のまま君に恋う【短編集】

宇野選手を実況したい！ 2/shm ページ14

「昌磨って、私のこと好きじゃないでしょ」

ぽつりと零した小さな声に、昌磨の動きがピタリとビデオを一時停止したみたいに止まった。

「なにそれ」

昌磨はゲームの画面から、私の顔へと視線を移す。
うっ、思わずドキリとしてしまった。

「私めんどくさいもん。構ってもらえないだけで、こんなに騒いで。昌磨に愛想尽かされてもしょーがないよ」
「そんなこと、ない」
「なくない。私ばっかり好きで、昌磨はなんも言わないじゃん。そんなの付き合ってても付き合ってなくても変わらないし、友達でいた頃の方がまだ楽しかったよ」
「違うって…」
「ごめんね。疲れてるのに文句ばっかり言っちゃって。もう帰るから、退いて…」
「違うって言ってんだろ！」

昌磨は私が逃げられないようにと私の両腕を乱暴に掴みベッドに押しつけた。
急な大声と行動に驚いた私は抵抗なんてできず、されるがまま。

「僕はAが好きだし、めんどくさいなんて思ってない。ただ、恋人ってどんなことしたらいいかとか、分からなくて、特別なことをしたらAに嫌われるって思って、冷たくして…」
「ちょ、昌磨…泣かないで…」

ぽたぽたと私の顔に落ちてくる昌磨の大きな瞳からでてくる無数の涙。

「わかれ、たくない」

声を震わせ、私の胸に顔を埋めてくる。
いやそれ、普通にセクハラなんじゃ…と思ったが今はそんなことを気にしている暇はない。っていうか、そこに顔埋められたらドキドキしてるのバレちゃう。

「私も別れなくない、から」

茶色のメッシュがところどころに入っているふわふわの髪を撫でる。なんだか、子犬みたいでかわいい。

「好き、好きだよ。好き好き好き、ずっと会いたかった。話したかった、好き。大好き」

一度吹っ切れたら止まらないらしい昌磨の愛の言葉は私の顔を真っ赤にさせるには十分すぎて、きっと私の顔は今にも爆発寸前だろう。
一通り伝えたら満足したのか、昌磨は私の胸に顔を埋めるのをやめてちらりとこちらを見た。

「顔真っ赤」

ニヤリと口角を上げ、いたずらっぽい顔で言ってくる昌磨。
恥ずかしくて、顔を腕で隠そうとしたがその手は昌磨にがっちり掴まれていて微動だにしない。

「構ってほしいんでしょ、構ってあげる」

さっきまで涙を流していた子犬はどこに…と思えるほど、今の昌磨はサディスティックな笑みを浮かべている。
待って、構うってどういう…？

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