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「蘭さん」
「…………ん?」
「終わったので私は帰ってもいいでしょうか」
皿洗いと洗濯を終え(ほとんど自動)、申し訳ないと思いつつもソファで座ったまま眠る蘭さんを起こす。
まだぼーっとしているようで、返事をしない。
帰りたいから早く許可くれ。
蘭さんは少しだけとろんとした目で私のことを見上げた。
「まだ」
「はい?」
「まだ終わってない」
「何をすればいいでしょうか」
今度は掃除機をかけろと言うのだろうか、あるいはお風呂掃除だろうか。
蘭さんは依然とろんとした目のまま口を開く。
「たまってる」
「埃でしょうか」
「違う。俺の…………」
蘭さんは言葉を区切ると、私の腕をグイッと引っ張った。
足の踏ん張りがきかずに、よろけてソファに倒れ込みそうになるところを蘭さんに抱きとめられる。
「すみません!!」
急いで離れようとしたが、蘭さんは手の力を緩めない。
「たまってんだよ。俺の欲求」
「は!?」
「相手しろ」
「は!?」
…………聞き間違いかな?
私は軽く呼吸を整えると、冷静に話す。
「えっと、ご用件は床掃除でしょうか。お風呂掃除でしょうか?」
「俺の夜の相手」
「…………ぇっと……」
頭がフリーズする。Noと言うわけにもいかないけど、これはさすがにいつものようにすぐに「わかりました」とは言えない。
何が正解なの?
え、私本当にこの人と寝なきゃいけないの?
絶対?
拒否権なし? あるわけないよな。
拒否すなわち死だ。
「断るのか?」
「……断れません」
「いい子だ」
蘭さんは私の肩を抱くと、唇を重ねた。
私は恐怖しか感じなかった。
気持ちいいとか、そんな感覚なんてない。
「怯えんなよ」
「……は……い」
消え入りそうな声で返事をすると、蘭さんは再び唇を重ねた。今度は舌が入ってくる。
脈が速くて、呼吸が苦しい。上手く息が吸えない。
早く離れてくれ。
死ぬ。
そう思った時、蘭さんの口がようやく離れた。
「……彼氏いたことあるだろ」
「へ……」
「その舌の動き。初めてじゃないよな?」
「…………今はいません。本当です」
「へぇ。嘘ついたんだ」
あ、マジで死んだ?
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まお - 完結おめでとうございます!キュンキュンしながら読ませていただきました。蘭ちゃんの色気がものすんごいのは間違いない(確信) (2022年1月23日 7時) (レス) @page31 id: 4ee49a658f (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - 華さん» ありがとうございます!!良作を作れるよう頑張ります! (2022年1月17日 14時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
華 - 完結、おめでとうございます! これからも変わらず応援してます! (2022年1月16日 23時) (レス) @page31 id: a19f9ab121 (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - ゆさん» 最後まで読んでくださりありがとうございます!素敵と言っていただけて嬉しいです!☺️ (2022年1月16日 20時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - ATR214YSさん» 最後まで読んでくださりありがとうございます!楽しんでいただけて光栄です😌 (2022年1月16日 20時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みくる | 作成日時:2021年12月2日 19時