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「家来るか?」
「行きます」
蘭さんは私の手を握り、車までエスコートしてくれた。
車を発車させると、蘭さんはバックミラーで私を見ながら「一体何があったんだ」と言った。
「散歩をしていたら突然目と口を覆われてこのザマです」
「俺のせいだよな」
「私が弱いせいです」
蘭さんに責任を感じてほしくなかった私はそう言った。蘭さんは申し訳なさそうな顔をした。
「俺の女にした以上、一生あんな思いはさせねぇ」
「ありがとうございます」
「惚れちまったんだから仕方ねぇよ」
私は「なんですかそれ」と笑った。
蘭さんの前でこんなにも自然と笑える日が来るとは思わなかった。
ほんと、好きになってしまったのだから仕方ない。
出会いはこの世で最も最悪なのではというほど酷かったし、犬になった時は人生終わったと思った。
最初の頃は恐怖の毎日だったのに。
それがいつから好きになってしまったというのだろう。
「俺が言うのもあれだけどよ、自分を犬にしてきた奴に惚れるとか、お前頭イカれてるぜ」
「自分でもそう思っていますよ。でも……」
「でも?」
「極悪非道のくせに優しいところがあったり、色気が溢れたりしてる蘭さんが悪いんですよ」
「褒めてんのか貶してんのかわかんねぇよ」
私はあはは! と笑うと、ふっと微笑んだ。
「褒めていますよ」
「帰ったらご褒美な」
「お仕置きじゃないんですか?」
「俺のこと好きならご褒美だろ」
「自意識過剰ですね」
「お前は犬の時の方がかわいかったな」
「ひどいですよ!」と不貞腐れて言うと、蘭さんは笑った。
「冗談。好きだぜ、A」
「いきなりなんですか! …………私も好きですよ」
最悪の連続は、この幸せのためにあったんだなと思う。
頬をほころばせながら、窓の外に流れる夜景を見つめる。
そうしているうちに、疲れが押し寄せ眠くなってきた。
けどもう眠気を必死に振り払う必要もない。
私は、蘭さんの心地よい運転に身を任せて、幸せな眠りに落ちていった。
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まお - 完結おめでとうございます!キュンキュンしながら読ませていただきました。蘭ちゃんの色気がものすんごいのは間違いない(確信) (2022年1月23日 7時) (レス) @page31 id: 4ee49a658f (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - 華さん» ありがとうございます!!良作を作れるよう頑張ります! (2022年1月17日 14時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
華 - 完結、おめでとうございます! これからも変わらず応援してます! (2022年1月16日 23時) (レス) @page31 id: a19f9ab121 (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - ゆさん» 最後まで読んでくださりありがとうございます!素敵と言っていただけて嬉しいです!☺️ (2022年1月16日 20時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - ATR214YSさん» 最後まで読んでくださりありがとうございます!楽しんでいただけて光栄です😌 (2022年1月16日 20時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みくる | 作成日時:2021年12月2日 19時