家族になって三日目 ページ25
紙袋や箱を両手いっぱいに抱えて、時々振らついたところを隣の彼に支えられながら歩道を歩く。一通り買い物を終えて店を出た頃には、すっかり日も暮れて、夜が迫ってきていた。
『ごめんなさい、たくさん持ってもらっちゃって』
「問題ない」
ベッドなどの大きな物は郵送で送ってもらうことになっていて手元にあるものは比較的軽いものが多いのだが、なんと言っても数が多くて嵩張る。その大半を彼に任せていることに罪悪感があって顔色を伺ったが、相変わらず無表情だった。
私も中也さんや立原さんにはこんな風に見えているのかな。芥川さんには失礼だけれど、確かに愛想は良くないかもしれない。もう少し、笑ってみたりした方がいいのかな。
ぐるぐると考え込んでいると、不意に声をかけられた。
「何だ、人の顔をまじまじと見つめて。僕の顔に何かあるか」
『あ、いや。ちょっと考え事』
「辛酸を舐めることでもあったか」
『しんさ、え、なに』
「...悩みごとか」
『最初からそう言ってほしい』
やはり何処か回りくどいというか、一々変な言葉を使う人。多分私の話を聞こうとしてくれているのだろうけど、気難しそうなこの人に解決を期待することはできなかった。
この数時間を共にしてわかったことは、彼は表情や感情の起伏が極端に少ない。そして口数も多くはない。余計なお喋りは無用だと目が告げていた。
そんな彼に相談を持ち掛けるべきなのだろうか。自身と似通っているとは思うが、まさかこんなに接しづらいとは。中也さんや立原さんも私のことを扱いにくいと、考えていたりするのかもしれない。
そうだとすれば、余計に。
『ねぇ、芥川さん』
「どうした」
『笑わない子ってやっぱり可愛くないのかな。顔にも口にも出ないのって、人を嫌な気持ちにさせちゃう?』
真剣だった。心底、真剣に問うたつもりだった。でも彼はふっと鼻で笑った。まるで馬鹿らしい質問だとでもいうように。私は思わずむっと眉を顰める。
『笑うところじゃない』
「笑止。笑うところに違いない。何故ならそれは杞憂というものだからだ」
『きゆう?』
「心配しなくても良いことという意味だ。中也さんはそんなことで貴様を嫌ったりはせん。そして、笑みばかりに拘ることもない」
今の顔で十分だ。
不機嫌な顔でも中也さんはきっと笑って喜ばれるだろうと言った彼の言葉が、それまでの小難しい言葉以上に私には理解ができなくて、また首を傾げた。
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苗代(プロフ) - 彩花さん» コメントありがとうございます。これからも頑張って更新していくので、ぜひご贔屓に。 (2018年7月18日 23時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
彩花 - とっても面白くて一気読みしてしまいました!!!これからも頑張ってください!と (2018年7月17日 15時) (レス) id: 2058922f9b (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 苗代さん» よろしくお願いしますm(__)m頑張ってくださいq(^-^q) (2018年7月13日 18時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 初めまして、作品を好きだと言って頂けてとても嬉しいです。これからも出来るだけ頑張って更新を続けていくので、これからもよろしくお願い致します。 (2018年7月12日 23時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 初めまして(*^^*)こんにちは(・∀・)ノこの作品本当に大好きです(*≧∀≦*)更新頑張ってくださいq(^-^q)応援してます(σ≧▽≦)σ (2018年7月12日 23時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)
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