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○△□ ページ6

結局エリスの言うとおりに中原中也の似顔絵を描くことにした私は、黙々と描き進めながらもちらちらと隣の少女の絵を見ては落胆していた。

彼女の描くイラストは年齢に相応しく可愛らしい。それに比べて私は、目も当てられない芸の細かさに最早薄気味悪さまで感じられた。これは良くない。非常に良くない。

私も元いた世界では全く色恋に関わりがなかったわけではない。好意を抱いてくれているという男子から、贈り物を貰ったこともある。けれどその中で最も理解に苦しんだのが“私の好みのお菓子だけが入った袋詰め”だ。特にあれが好きこれが嫌いと言ったことはないはずなのに、見事に好きなものしか入っていなかった。

正直心の中で恐怖さえ感じたのは、言うまでもない。

その経験上、どうもこの絵は彼をあの日の私と同じ気持ちにさせてしまうような気がしてならない。けれども性格故か妥協することも出来なかった。

「できたー! 貴方...えーっと、Aだっけ。リンタロウに自己紹介してたわよね。できた?」

『Aで合っていますよ。一応、私も描けました』

「わっじょうず! いいじゃない。きっとチュウヤも喜ぶわ」

それはどうだろうと苦笑しながら、エリスに連れられて部屋を出ると未だ森さんと中也さんが話し込んでいる最中だった。いつの間にか紅葉の姐さんも加わっている。

「あなや、其方が噂のおなごか?」

『どんな風に噂なのかはわかりませんが、多分そうです』

にこりと努めて笑顔で返すと、愛いのうと微笑み返された。嬉しや恥ずかしやで目を逸らしていると今度は森さんに声をかけられた。

やけに探るような目付きに、自然と肩に力が入る。

「いやね、実は密かに君のことを調べてたんだよ。なんとなく気付いていたとは思うけれどね? でも不思議なことにどんな手を使っていくら調べようとも君の情報がまーったく上がってこない」

どういうことだろうね。

問いに黙りを決め込むのは不可能だとわかっている。けれども簡単に答えられるほど単純な話でもなくて、私は大いに悩んでいた。

素直に事実を白状して果たしてそれを信じてもらえるのか。

しばらく沈黙が場の空気を支配すると、痺れを切らしたかのように尾崎紅葉が溜息を吐いた。鴎外殿もお人が悪いぞと。

「娘や、気にせんでよい。これはただの確認作業じゃ。彼の中で大方検討はついておる」

「まあね」

彼らの会話にほっと胸を撫で下ろしたなか
もう一人の男だけが歯切れの悪そうな顔をしていた。

○△□→←愛のある日



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苗代(プロフ) - 斜陽族さん» コメントありがとうございます。最後の最後に一気に更新したので、急ぎすぎてしまった感じは否めませんが、そういって頂けて本当にありがたいです。環境がら多忙なことに変わりはありませんが、これからも作品を書き続けていくつもりなのでどうぞよろしくお願いします。 (2019年1月3日 11時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
斜陽族 - 読み終わってとっても感動しました!こういう深いお話好きです。発想力があって尊敬してしまいます。これからも無理のない程度に頑張って頂けると嬉しいです! (2019年1月3日 10時) (レス) id: 4feb0da943 (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - マッキーさん» コメントありがとうございます。現在とても忙しい状況で、当作品も含め連載中の作品全て手がつけられていないのですが、そろそろ更新を再開していくつもりなのでどうぞよろしくお願いします。 (2018年12月26日 11時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
マッキー(プロフ) - 更新頑張ってください! (2018年12月25日 22時) (レス) id: 0346650c4f (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - リツさん» ご丁寧なコメントありがとうございます。主人公の設定は私を自己投影して作成している面が大きいので、読者の方にそう言って頂けてとても嬉しいです。ぜひ最後までお付き合い下さい。 (2018年11月21日 17時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:苗代 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年10月29日 15時

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