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○△□ ページ12

一頻り泣いたあと、これまでにないような晴れやかな気持ちになっていた。涙が溢れたときは、悲しさや悔しさや、恐怖も怒りもあったはずなのに。もちろん喜びだって含まれた涙だった。

私を初めて“頑張っている”と認めてくれた彼は、それからずっと頭を撫でてくれていた。正直高校生にもなって恥ずかしいという気持ちが半分、安心が半分。

顔を上げると、どうしたと声をかけられた。

『私、貴方のこと好きになってよかったです』

「そりゃあ告白か?」

『そんなとこ』

「ヘェえ」

しばらく沈黙して、男の様子を窺う。特に何かを気にしているようには見えなくて、頭を撫でてくれたことにも他意はないとわかっているから、燻っていた怒りの感情がむくりと頭をもたげた気がした。

なんで怒ってないの。

小さな呟きに、またも中也さんが不思議そうな顔をする。

「なんで俺が怒らねぇといけねえんだよ」

『だって...言ったじゃないですか私、中也さんのこと自分の精神を保つために利用してただけなのに、愛なんてお綺麗な言葉で飾ったんですよ。今の好きになってよかったなんて言葉だって、嫌味ったらしくて反吐が出るって思わないの』

「思わねぇよ。手前がその悪いと思った部分を自覚して、自分で自分に怒ってンだ。それで十分だろ」

なんでもないような顔してそんなことを言って。

彼はずるい。時分が大人であることを免罪符に、私のことを叱ってはくれないのだから。ただ努力を認められて褒められて、咎められないことがこんなに苦しいなんて知らなかった。

嬉しいのに、罪悪感でいっぱいだった。
きっと私が求めすぎているからだ。

今は只管に悩みに終止符を打たれた鑑賞に浸ってしまおう。


幼い頃から、孤独を感じることが多かった。

いつも周囲には人が居て、友人にも家族にもおそらくは愛されていたと思う。けれどそれはいつも、私が“頑張って”取り繕った外面で、見つめて欲しい内面には誰も触れてはくれなかった。

外面なんて作らなければいいって、思うかもしれない。
私もね、そう考えたことはあったんだよ。

だけど最初はみんなが好いてくれる自分になりたくて、みんなに喜んでもらいたくて始めたことだったから。わかるでしょ? やめたらね、みんながっかりするんだよ。

いい子じゃなくなれば、誰もが失望して去っていく。

あの顔を見て絶望するくらいならって思っちゃうの。

だから本当に嬉しかった。中也さんが初めて
いい子じゃない私を拒絶しないでくれたから。

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苗代(プロフ) - 斜陽族さん» コメントありがとうございます。最後の最後に一気に更新したので、急ぎすぎてしまった感じは否めませんが、そういって頂けて本当にありがたいです。環境がら多忙なことに変わりはありませんが、これからも作品を書き続けていくつもりなのでどうぞよろしくお願いします。 (2019年1月3日 11時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
斜陽族 - 読み終わってとっても感動しました!こういう深いお話好きです。発想力があって尊敬してしまいます。これからも無理のない程度に頑張って頂けると嬉しいです! (2019年1月3日 10時) (レス) id: 4feb0da943 (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - マッキーさん» コメントありがとうございます。現在とても忙しい状況で、当作品も含め連載中の作品全て手がつけられていないのですが、そろそろ更新を再開していくつもりなのでどうぞよろしくお願いします。 (2018年12月26日 11時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
マッキー(プロフ) - 更新頑張ってください! (2018年12月25日 22時) (レス) id: 0346650c4f (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - リツさん» ご丁寧なコメントありがとうございます。主人公の設定は私を自己投影して作成している面が大きいので、読者の方にそう言って頂けてとても嬉しいです。ぜひ最後までお付き合い下さい。 (2018年11月21日 17時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:苗代 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年10月29日 15時

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