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_ プルルルルルッ
ソファーの隅っこに無造作に置かれた携帯が震えて光り始めたのと同時に画面に映ったのは
“A”
携帯のところまで走ってすぐに通話ボタンを押す俺の顔は絶対に頬が緩みっぱなし
『もしもし?A?』
受話器に耳をつけると
その向こうから聞こえてきたのは、水たまりの上を車が水を切って走っていく
しゃー、という音でAの声やなくて
もういっかいA?と名前を呼ぶと やっと聞こえてきた声は少し不安そうな声やった
「はやとのおうち、行ってもいい…?」
いいけどひとりで来れるんかな…と思って迎えに行くでって言うと
そこでプツッと電話が途切れた
それと入れ替わるように部屋に響いたのは ピンポーン、というチャイムの音。
まさかと思って玄関を開けると予想通りそこにはAがいた
『来る前に電話せな、(笑) もしダメって俺が言うとったらどないしたん、…
A?』
中に入ると俺の胸にスリスリと顔を摺り寄せてきて
細い腕で俺を抱きしめた。
「知らなかったから、当分会えないかと思った…」
そうや…
ほんまに急に今日二軍に行って二軍の監督と話すってなったからAに言えてへんかったんやった…
『ちょうど俺がファーム行こう思って車に乗った時にA歩いてんの見て
言わなあかんて思ったんやけど、忙しくて忘れてて…
ごめんな?』
空気が抜けたように床にへたばったAの頭をなでると
みるみるうちにとろん、となった目で俺を見るAが可愛くて可愛くて
瞼にキスを落とせば コテコテと俺の肩に寄りかかる
『ふふっ、もう泊まっていき? 一緒に寝よ』
「えっちなことしない…?」
『あほ』
今にも寝そうなやつに無理矢理そんなんせんよ
すでに目を瞑ってるAを抱き上げて
おやすみ、とだけ言って俺もとなりに横になった。
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作者名:実玖 | 作者ホームページ:http://mikupepe//pa-na
作成日時:2016年5月31日 7時