爪一枚【d!】

2枚目 ページ2

貴方side



ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ


玄関のチャイムが鳴る。
こんなベストタイミングで一体誰だと思いながら、覗き穴を覗く。


『ﾋｲｯ……！！』


驚いて尻餅をつく。
ドアの向こう側、目があった。
私が覗き穴を見ることを見越していたのだろう。
あちらから中は見えないのに、こっちをじっと見つめている血走った目が向こう側に見えたのだ。


ﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝ


ﾋﾟﾝﾎﾟﾋﾟﾝﾎﾟﾋﾟﾝﾎﾟﾋﾟﾝﾎﾟﾋﾟﾝﾎﾟﾋﾟﾝﾎﾟﾋﾟﾝﾎﾟﾋﾟﾝﾎﾟﾋﾟﾝﾎﾟ


私の声が聞こえたのか、無限に鳴らされるチャイムと、叩かれるドア。
音は段々と大きくなってきているようで、恐怖からか私はその場から動けず、ただ呆然と扉を見ているだけだった。


『いやぁ、、！やめ、、、辞めて！』


大声でそう泣きながら叫ぶ。
その時、ふと音が止んだ。
諦めて帰ったのか、私の声で辞めてくれたのか、震える足を立たせて確認のために覗き穴を覗く。
向こうには目はもう無く、見慣れた廊下が広がっている。


『はぁ、、はぁ、、怖っ。』


安心からどっと力が抜けて、そのまま床に座り込む。
さっきのはあの爪の持ち主なのか、取り敢えずもうホントに怖すぎて無理。
友達の家に転がり込みたい。


『、、まさか隠れてるとか、、無いよね？』


昔、本でそう言うのを見たことがある。
覗き穴には映っていないのに扉の前にいて、開けたらそのままころされる。
そんな怖いお話。
それが脳裏に蘇り、まさかと思いながらも、もし本当に入るのだったら？待ち構えていたら？
そんな悪い妄想がどうしても消えなくなってしまった。


続く

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